「良かった時の動きが忘れられなくて…」全中二冠、高校で16年ぶり高校新記録…元“高校最速ランナー”東洋大・石田洸介が陥った「天才ゆえの苦悩」 

　振り返れば石田は、大学までは天才の名をほしいままにしてきた。

　福岡・浅川中時代は、3年時に全日本中学校選手権で1500mと3000mの二冠。学年別のジュニアオリンピックは1、2年時は1500mで、3年時は3000mで優勝を果たしている。

「全中の決勝で最初にスパートを仕掛けたのが吉田響選手でした。自分はそれについて行ったという感じです」

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　当時を懐かしむように、石田はそう振り返る。全国の舞台で競った選手には、創価大の吉田や早大の伊藤大志、青学大の太田蒼生や鶴川正也といった箱根駅伝のスターたちがいた。

福岡代表として出場した中学時代の都道府県対抗駅伝では2区で区間新記録。その記録は7年後の今も残る　©︎JIJI PRESS

　だが、当時の石田は同世代のライバルを寄せ付けなかった。記録でも、1500mと3000mで日本中学記録を樹立し、全日中の非実施種目の5000mと合わせて3種目の中学記録保持者となっている。

5000mで「16年ぶり」高校記録を更新

　高校では地元・福岡を離れて群馬の東農大二高に進学。下級生の頃は思うような結果を残せずフラストレーションを抱えたこともあったが、高2の終わり頃からじわじわと本領を発揮し始める。そして3年目の2020年には新型コロナウイルス感染拡大の影響で、目標としていたインターハイこそ中止になったものの、5000mで佐藤秀和（仙台育英）の持つ日本高校記録を更新してみせた。

　新記録樹立は実に16年ぶりの快挙。大迫傑（早大→Nike）や遠藤日向（学法石川→住友電工）といった実力者たちが辿りつけなかった領域に石田は到達した。しかも、2度もその記録を塗り替えた。

「高校の時が感覚的に一番良かったです。身体の使いたい部位を使えていて、簡単に言えば腕を振ったらちゃんと足が出る。そういう状態で走れていたのが記憶に残っています。故障もなく継続して練習もできていて、いろんなスピードに対応できていました」

群馬・東農大二高時代は16年ぶりに5000mの高校記録を更新　©︎JIJI PRESS

　中学に続き高校でも金字塔を打ち立て、石田は絶頂期を迎えていた。だが皮肉にもこの時の感覚が、後に石田自身を苦しめることになる。

　18歳になった石田は「世界を目指したい」と公言。当時、大迫が主催した少数精鋭の短期キャンプ“Sugar Elite short Camp”に高校生として唯一人参加している。大迫に進路を相談した際にはアメリカの大学への進学を薦められたこともあったという。

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