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「これがプロのチームか?」ロッテ選手たちの前で新監督・伊東勤が“号泣した”真相…ブーイングに「悔しくないのか!」就任1年目の“計算外”
text by

伊東勤Tsutomu Ito
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/01 11:03
伊東勤は監督として、ロッテをどう変えたのか?
「これがプロのチームか?」ロッテの練習内容に衝撃
そんな気持ちで臨んだ秋季キャンプ。言葉は悪いのですが、これがプロのチームか? と思うほど、練習のレベルが低かったことに衝撃を覚えました。
練習メニューは、前任スタッフが決めたものを踏襲してやっていたのですが、こういう野球もあるのか? と思うぐらいでした。
私の感覚だと、秋の練習はシーズン後なので、極論すれば故障寸前まで追い込んでもいいと思っていました。だけど、そういう雰囲気がまったくない。体力を強化するような内容もありません。
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バッティング練習を見ていても、土台ができていなくてフラフラ崩れているような選手もいました。
これはいったいどういうことなのか。どうやら、バレンタイン監督の時代から、練習の内容が変わったというのが真相でした。アメリカ式のやり方なのかは知りませんが、練習時間も短いし、基礎体力系の練習もしないし、走り込みも投げ込みもしない、させない。そういう指導方針が、文化として根付いてしまっていました。
これは計算外でした。それによって1、2年はいい結果が出るかもしれませんが、それは過去の練習の蓄積があってのこと。もともとの体格や体力に違いがある日本人プレーヤーは、プロ野球選手になってからもしっかり体づくりをしないと、トップレベルにまで達することができないのは、私たちにとっては常識です。
そういう事情が理解できていないと、「やらなくていい練習」という判断になるのでしょう。
伊東勤はロッテをどう変えたのか?
そのため、根本から変えていくことにしました。基礎体力からです。午前中はバットもグラブもボールも一切持たない。もう陸上部かという感じで大体2時間ちょっと、たっぷり基礎体力強化に充てました。
午後からは「野球部」になりましたが、まず練習をする体力をつくることを意識して、サブグラウンドでもいろいろやっていました。
おそらく「西武の人が来て、やらされている」と感じた選手もいたのではないかと思います。でも、これを変わる機会だと思って取り組んでくれた選手は、ぐんぐん良くなって、現実に選手として長くプレーできています。
時代が変わろうとも、流行が変わろうとも、変わらない本質というものはあります。それは、まずきっちりと基礎体力をつけて、基礎の技術をそこに乗っける。そういう地道な作業がまずは必要です。そこがスタート地点。
自分で言うのもなんですが、そのあたりを見極める目は肥えていると思っています。この選手は軸がしっかりしている、基礎ができているから大丈夫。この選手は、見た目にはすごいようだけれど、体の芯に弱さがある。そういったものは見ていれば、すぐにわかります。
