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森下暢仁、名実ともにカープの顔へ…「先頭に立ってやっていく」初の開幕投手抜擢で問われる自覚と覚悟

posted2025/03/03 11:00

 
森下暢仁、名実ともにカープの顔へ…「先頭に立ってやっていく」初の開幕投手抜擢で問われる自覚と覚悟<Number Web> photograph by JIJI PRESS

キャンプでは初日からブルペン入りするなど意欲的な調整を続けてきた森下

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 開幕投手への抜擢は、ある意味で通過点なのかもしれない。3月28日阪神との開幕戦に先発することが決まった広島の森下暢仁は、いつものクールな表情で受け止めた。

「昨シーズンが終わってからそういう気持ちでいましたし、しっかり結果を残せるようにやりたいと思っています」

 入団6年目にして初の大役に、喜びではなく覚悟がにじむ。本人が口にしたように、昨季終了後から森下の発言が変わったように感じられた。

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「ローテーションを守るのは当たり前で、先発として誰かが一人でも突き抜けないとチームの優勝というのは難しいと思う。キャリアハイを目指して、先頭に立ってやっていきたいと思います」

 昨年12月の契約更改の会見では、そう力強く言い切った。もともと内に秘めた思いの強い投手だった。入団1年目のシーズン終盤、新人王争いについて問われたときには「全然、意識しています。取りたい気持ちはどんどん強くなっています」と言葉を濁すことはしなかった。昨季味わった屈辱が、そんな森下の本能を燃えたぎらせたのかもしれない。

昨季の急失速での自責の念

 チームは終盤まで首位にいながら9月の歴史的な急失速で優勝を逃し、クライマックスシリーズ出場圏内からも陥落する4位でシーズンを終えた。森下自身も8月27日の中日戦以降、登板6試合6連敗に終わった。だがそれまでは、登板17試合でクオリティースタート(投球回6回以上、自責点3以下)を達成できなかった登板は2度しかなく、ハイクオリティースタート(投球回7回以上、自責点2以下)を10度達成する安定ぶりだった。援護に恵まれない中でも2桁10勝を積み重ねた森下を責める人など、どこにもいない。それでも9月以降、先発4本柱で白星を手にしたのは、オリックスへFA移籍した九里亜蓮(1勝)のみ。森下の中には自責の念があった。

「食い止めないといけないところで食い止められなかった。そのせいでBクラスになってしまったと思っている」

 優勝を逃しただけでなく、自身にとっても”突き抜ける”チャンスを逃した悔恨があるのかもしれない。投手としての高い能力は誰もが認める。21年の東京五輪では金メダル獲得に貢献するなど、球界でも指折りの本格派だ。だが、シーズン最多勝利は昨季を含め3度記録した10勝と、突き抜けた成績を残せていない。もちろん、打線とのかみ合いもあるとはいえ、投手タイトルとは無縁で、シーズン10勝は森下の能力を考えると意外な数字といえる。

【次ページ】 キャンプ初日のブルペン入り

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