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「ほ、ホントにご本人ですか?」ダルビッシュから突然の連絡→球速160キロに→ドジャース入団…元DeNA北方悠誠「嘘のような本当の逆転人生」
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氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byYujo Kitagata
posted2025/02/22 11:16
驚きの申し出からダルビッシュの教えを受けて、ドジャースとの契約に至った北方悠誠。大逆転人生を語りつくした
ビザの関係などでアメリカに渡ったのは6月下旬だったが、チームは160キロを投げる北方をいきなり高いレベルの場所に放り込んだりはしなかった。まずはルーキーリーグに所属させ「アメリカの環境に慣れる」ことに重きを置いた。
「アリゾナのルーキーリーグにいました。朝早くにグラウンドに行って、練習してトレーニングをしてホテルに帰る。その繰り返しでした。試合にも登板しました。1試合投げれば次の日は休むというルーティンでした。おそらく、僕がメジャーで投げるとしたら、こんな役回りなんだろうな、というのは想像できました」
計画的なアメリカのトレーニング
計画的なスケジュールのもと、それに沿って練習とトレーニングを繰り返す。160キロの球を投げるということでチームメイトからも注目されたが、自分よりもはるかに若い選手たちが高い意識で練習する姿勢を見たことは、逆に北方の野球人生にとって大きな経験にもなった。
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シーズン終了後はオーストラリアのウインターリーグに参加。試合登板の少なさを自ら志願して埋めるなど、翌年に向けた準備は着々と進んでいた。
しかし2020年、新型コロナウイルスの猛威が世界中を巻き込み、マイナーリーグは中止。北方はその姿を見せる場を失った。日本に帰国して、ドジャースと契約状態でありながら、栃木でもプレーするという特例をもらって野球はできたものの、メジャーは遠かった。
大舞台の一歩手前で…
2021年にはマイナーキャンプに参加。現在ベイスターズで先発投手を務めるアンドレ・ジャクソンとは、その時に出会った。だが北方は肩を痛めてしまい、コンディションが上がらないままスプリングトレーニング中にリリースされた。
日本に復帰後も独立リーグでプレーを続けたが、2022年限りで現役を引退。現在は地元の佐賀県に戻って、解体業者に勤務しながら中学生の指導をしている。
結局、日本でもアメリカでも、プロの舞台で投げることはできなかった。だが、メジャーリーグ目前の位置まで行けたことは、彼の大きな財産だ。

