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「藤井聡太さん級になるには言葉を捨てて…」悲痛な本音から5カ月後の3連敗「感想戦でいつも以上に笑顔だった」永瀬拓矢が再び“激白80分”

posted2025/02/11 06:00

 
「藤井聡太さん級になるには言葉を捨てて…」悲痛な本音から5カ月後の3連敗「感想戦でいつも以上に笑顔だった」永瀬拓矢が再び“激白80分”<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

永瀬拓矢九段が藤井聡太七冠に挑んでいる王将戦。第3局の後、記者が聞いた「80分間の本音」、その内容とは

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大川慎太郎

大川慎太郎Shintaro Okawa

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Keiji Ishikawa

将棋界の絶対王者・藤井聡太七冠(22歳)の壁をどう乗り越えればいいのか――。その宿命に向き合い続けているのが永瀬拓矢九段(32歳)だ。王将戦第3局を終えた2月6日の夜、旧知の記者に電話口で再び語った「80分間の本音」、その内容とは。〈NumberWebノンフィクション/全4回の1回目。棋士の肩書は省略〉

5カ月前のインタビューで聞いた“悲痛な叫び”

 ALSOK杯王将戦第3局の対局場である「オーベルジュ ときと」から徒歩5分ほどに位置するビルに報道控室はあった。取材パスをもらってから日本将棋連盟のモバイル中継で2日目の戦況を確認していると、先輩記者に「大川さん、今日もこれですか?」と言って左手を耳に当てるポーズをされた。対局者の永瀬拓矢に今晩も電話取材をするのか、という意味である。

「どうでしょうか。もしかしたらダメかもしれないので」と返す。

 永瀬の公式戦を観戦するたびに、対局直後の深夜に取材をすることが恒例になっていた。「取材は対局が終わった後がありがたいです。どうせ眠れないので」と本人から言われていたからだ。

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 直近の永瀬の取材は、昨年9月の王座戦第2局。このナンバーウェブに寄稿したもので、藤井聡太王座に連敗して追い込まれた永瀬は悲痛な叫びを発していた。

「藤井さんみたいな超一流になるには、将棋だけに没頭していた頃に戻らなきゃいけない。なんというか、その頃って漆黒の世界にいたような感じで、そこは言葉を捨てるイメージなんです。言葉が必要なければその資源を別のこと、つまり将棋に回せるでしょう。だからロングインタビューなどを受けるのはこれが最後になるかもしれませんよ」と告げられていたのだ。

 冗談めかしてはいたが、本心はわからない。「(取材が)ダメかもしれない」というのは私の偽らざる気持ちだった。

 永瀬に接触しようとするのはその王座戦の夜以来だった。そこからは顔も見ていない。フリーの記者がタイトル戦を取材するのは簡単ではないのだ。私は専門誌の『将棋世界』で仕事をしているので恵まれているが、それでも今冬は王将戦ではなく、棋王戦を担当することになっている。

永瀬は本当に“言葉を捨てようとした”のか

 将棋界は棋士と記者の距離が近い業界だとは思うが、私は普段は永瀬と連絡を取り合っていない。いつも取材に応じてくれるからといって馴れ合っているわけではなく、緊張感のある関係を心掛けていた。

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#藤井聡太

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