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もし東大に合格していたら?「それでも早稲田に来たと…」偏差値72の名門高出身…5000m15分台だった早大“一般入試の星”が箱根駅伝を3度も好走のワケ 

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和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2025/02/23 11:00

もし東大に合格していたら?「それでも早稲田に来たと…」偏差値72の名門高出身…5000m15分台だった早大“一般入試の星”が箱根駅伝を3度も好走のワケ<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

年始の箱根駅伝10区で区間5位の好走を見せ、早大の総合4位に貢献した4年生の菅野雄太。実は近年では珍しくなった「一般入試組」のランナーだった

 17km過ぎ、一気にペースアップした吉田に、菅野は対応することができなかった。

「離されたとはいえ、僕も(1km)2分50秒ぐらいにペースが上がっていました。おそらく吉田選手は2分40秒台まで一気に上げたと思います。『こんなに上がるんだ』と驚きました。新八ツ山橋以降は余力を残しておいたんですけどね……。対策した上で、想定したところで仕掛けられたのに対応できなかった。完全に力負けです」

 菅野も終盤に粘りを見せたが、4番目に大手町にフィニッシュした。チーム目標の総合3位には惜しくも10秒届かず。総合4位はこの4年間では最高成績だったが、チームは悔し涙に暮れた。ただ、悔しさも大きかったが、その一方で確かな手応えもあった。

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「4位でも誰も満足していない。というか、全員が悔しいと感じていました。マインドの変化というのは強くなる上では重要だと思うので、そこが一番のチームの成長かなと思っています」

 4位という成績を残したこと以上に、その成績でも悔しさを露わにする仲間の姿を見て、菅野はチームの成長を実感していた。

 また、菅野自身は2年連続で区間5位の快走を見せた。それでも國學院大の吉田に敗れたのだから、完敗を認めるしかなかった。

「これまでは自分の得意な形でしかレースをしてこなかったんですけど、今回は後ろに付かれたこともあって、これまでにやってこなかった、揺さぶるような仕掛けをしました。いろいろ奮闘した上で最後は実力が足りなかった。今ある力は出し切った、やり切ったと思っています」

 少し時間が経って最後の箱根駅伝を振り返ると、こう言い切ることができた。

入学時は「一度でも箱根を走れれば…」

「入部当初は、4年間で一度でも箱根駅伝を走れれば上出来だなぐらいに思っていました」

 今や高校生の5000m13分台も珍しくはない時代になったが、菅野の高校時代のベストは15分6秒に過ぎなかった。入学したばかりの菅野がこう考えるのも当然のことだった。

 それが、菅野は3度も箱根駅伝を走った。しかも、10区で区間10位、5位、5位という好成績だった。

「自分としてはそんなに“一般組”と“スポーツ推薦組”とを分けて考えていませんでした。ただ、僕自身が“一般組”であることで、今後一般入試で入ってくる後輩のロールモデルにはなれたかなと思っています」

 そう、菅野は一般入試を経て名門・早稲田大学競走部の門を叩いた、いわゆる“一般組”の選手だった。

 大学長距離界のレベルが上がった昨今では、もはや高校時代の実績がない非推薦組のランナーを箱根路で見かけることはほとんどないと言っていい。ではなぜ、菅野はここまで驚異的な成長を見せることができたのだろうか?

<次回へつづく>

#2に続く
「最初はBチームの練習にもつけなくて…」東大受験も勧められた早大“一般入試の星”が「5000m15分台→3度の箱根駅伝出場」にたどり着いたウラ話
この連載の一覧を見る(#1〜3)

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