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ソフトバンクで異例人事「“32歳の元高校教師”がコーチに…」あの近藤健介から突然のDM「えっ、本物?」異色の野球YouTuber・菊池拓斗とは何者か
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田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2025/02/18 06:00
ソフトバンク、今春キャンプの様子。写真は近藤健介と柳田悠岐
「スキルコーチの適任者を探すにあたり、プロ野球で実績を残した方ならば、すでに長谷川コーチや明石コーチがいます。また違った視点を持った方がいいのではないか、というのがありました。さらに子供たちが理解できるように教えるというのは、大人を指導するよりはるかに難しい。それを経験しているのもありました」
かくして菊池はソフトバンクに入団を果たした。
大学の先輩・山川と再会
ひと昔前のクセモノだらけのプロ野球界ならば「プロ野球選手でもなかった男が何をエラそうに」と撥ね除けられるのが当たり前だったが、今の球界は空気感が全く違う。動画などで自ら情報を求めに行く選手が増えているためだろう。加えて、ソフトバンクはデータサイエンスを積極活用して12年ほどの年月も経っており、菊池のような人材が働きやすい環境が整っている。
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ただ球団が求めているのは菊池の打撃理論を浸透させることではなく、あくまで球団が推し進める動作解析に基づいた球団育成メソッドに沿った指導を行うこと。その中で選手から質問があれば自身の知識をもって説明するというスタンスだ。
また、山川とも大学卒業以来の再会を果たした。
「初日にいきなり声をかけてくれて、ティー打撃の手伝いをしました。すごく気持ちが楽になりました。大学時代の僕はレギュラーではなかったので肩身も狭く、たまに将棋を指すくらいでそんなに話をしたこともなかった。『拓斗がそんなに野球が好きだとは思わなかったよ』って言ってましたね」
テクノロジーによって、野球はこの10年ほどの間でも急速に変化している。経験、勘、度胸のいわゆる「KKD」だけに頼る考え方は価値を下げている。
「能力を上げるためには正しいプロセスを踏まないといけません。それを手助けするのがスキルコーチです。プロ野球界だけじゃなくて、アマチュアの野球界も含めて、その考え方が浸透していけばと思います」
パイオニアとなる菊池は野球界にどんな風を吹かせるのだろうか。

