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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「うるせー、クソ指導者!」暴言まさかの謹慎…“まるでハイキュー!!”と感動を呼んだ高校生の成長物語「じつは問題児だった“身長169cmのエース”」
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2025/02/13 11:02
春高バレー2回戦、慶應義塾高校との激闘を終えて整列する鳥取中央育英高校。身長169cmのエース星原(左)は仲間に肩を支えながら会場を後にした
鳥取県北栄町にある県立鳥取中央育英高校は、『名探偵コナン』の原作者である青山剛昌氏の母校としても知られる。スポーツクライミングや陸上競技、水球などの種目で全国大会に出場する運動部が多く、バレーボール部も実は8年連続で春高出場を果たしてきた。星原たち3年生の代までは普通科の中に体育コースがあり、高校2、3年時の担任が桑名だった。
桑名は鳥取県倉吉市の出身で、鹿屋体育大を卒業後に教員となり、定時制高校に勤務した7年間を経て、2013年に鳥取中央育英に赴任した。バレーボール部の顧問に就任した当時は部員も少数で、専用の体育館はない。だが「育英を全国で勝てるチームにしたい」と発起した桑名は自ら選手を勧誘するべく、県内の中学校を回った。
地道な努力が実り、2017年度に春高初出場。意気揚々と夢の舞台へ挑んだが結果は初戦敗退。インターハイでは勝利を挙げたものの、春高では毎年のように敗戦を喫し、勝つことの重さを誰よりも痛感してきた。
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「他県の先生から『春高(出場)が決まってからが地獄の始まり』と言われて、最初は意味がわからなかった。僕は出ることに価値があると思っていましたから。でも実際に2年、3年と続けて出ても勝てないと『残念だったね』で終わるんです。毎年春高で1勝を目指して臨むけど届かない。認めたくないですけど、惨めでしたね」
「この子は面白い選手になる」
近隣県にとどまらず、九州や関西、関東にも遠征し、練習試合や合同合宿を依頼した。大差で敗れることもあったが、そのたびに「この悔しさを春高でぶつけろ」と選手たちに檄を飛ばす。今年こそは、と思える年もあったが、それでも春高での1勝は遠かった。
そんな中、2022年春に入学してきたのが星原だった。
「今までのチームは誰よりも僕が『勝ちたい』『勝つぞ』と思って先頭に立ってきたんです。でも、星原は僕よりも『絶対勝ちたい』『何が何でも勝つ』と負けん気を前面に出す。そういう生徒は星原が初めてでした」
小学1年から中学3年までバレーボールと並行して習ってきた空手で鍛えた体幹と抜群の運動能力、そして何より「勉強以外は誰にも負けたくない」という性格が武器。知人から「面白い選手がいるから練習に参加させてほしい」と紹介された星原の姿を見た桑名はすぐに魅了された。
「パワーもありましたし、何より、プレーを見ればこの子はずっと小さいと言われ続けて、なにくそ、と思いながらやってきたんだろうな、と伝わってきた。この子はいいな、面白い選手になるな、と思って1年生からレギュラーで使うと、すぐに大活躍した。当時から地元の新聞でも“小さな巨人”と取り上げられたり、同じ代の選手も揃っていたので、星原たちが3年になる時は勝負できるチームになるかもしれない、と思いましたね」
ところが、星原の負けず嫌いが災いした。

