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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「うるせー、クソ指導者!」暴言まさかの謹慎…“まるでハイキュー!!”と感動を呼んだ高校生の成長物語「じつは問題児だった“身長169cmのエース”」
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2025/02/13 11:02
春高バレー2回戦、慶應義塾高校との激闘を終えて整列する鳥取中央育英高校。身長169cmのエース星原(左)は仲間に肩を支えながら会場を後にした
「でかいやつを倒す」という負けん気は、チームの柱になる選手として心強い一方で、ネット越しの相手に対する感情表現は時に行きすぎることがあった。高校年代では珍しいことではないが、星原の態度はたびたび他校の監督から指導を受けるほどだった。
そして、事件が起きる。
2024年、星原が新主将に就任した直後の3月、鳥取中央育英を含む数校が集まっての合宿時の出来事だ。
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練習試合の内容に腹を立てていた星原は、他の選手たちがアイシングや帰り支度をしている中でも苛立ちを隠せないでいた。相手だけでなく味方にも厳しく接する星原の姿は桑名にとっては日常だったが、他校の監督からは不貞腐れているようにも映った。
「あの子がキャプテンじゃ、ダメでしょう」と桑名のもとに意見が届き、なかには「キャプテンを変えないと、うちは今後、一緒に練習試合やらないよ」とまで言い切る監督もいた。
「(星原は)勝ちたい、と思って一生懸命やっている。ただ、僕が見てもそこまで言わなくてもと思う時はある。だから周りの先生方に注意されるのも仕方ないとはわかるんです。でも、あの強さは本物。星原が大事なところでやってくれると信じていたからこそ、キャプテンとして、もう少し意識するところは他にもあるぞというつもりで注意することにしたんです」
「うるせー、クソ指導者!」
合宿を終え、学校に戻ってから桑名は星原を呼び出した。
「他校の先生から、お前の態度に対してよくないとご指導をいただいている。チームを引っ張る存在なんだから、自分の機嫌や感情だけで振る舞うな」
星原は「はい」と小さな声で返事をした。しおらしく聞いていたように見えたが、その直後、星原の声が廊下から響いた。
「うるせー、クソ指導者!」
腹の中で思っても、口に出すな――。桑名は、キャプテンになったばかりの星原に謹慎を命じた。

