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「結婚しよう。ブラジルで貴女を支える」“交際0日”柔道指導者の恋人にプロポーズ…「私も夫も金メダルに号泣」藤井裕子夫妻のスゴい人生
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沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2025/01/30 06:01
ブラジルで12年間を過ごした藤井裕子・陽樹夫婦に柔道指導の日々と私生活を聞いた
「日本武道館の雰囲気は熟知していたし、練習場にも慣れていました。とはいえこの大会に参加できる晴れがましさがある一方、やはり特別な緊張感がありました」
――男子66kg級のダニエル・カルグニンが準々決勝で世界ランキング1位のイタリア選手を倒すなど大健闘し、準決勝で阿部一二三に敗れたものの銅メダル。彼と2人で、嬉し涙を流しながら抱き合った。ただ、彼以外にもメダル候補がいたが、表彰台には手が届かなかった。
「ブラジルではパンデミックが猛威を振るい、数カ月間、国内では全く練習できず苦しめられました。でも、もっとできることがあったのではないか、という悔いが残ります」
自分と夫のキャリアを…日本帰国を決意
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――その後、ブラジル男子代表のコーディネーターを経て、2024年5月、レアソンのコーチに就任。ブラジル全土を回って指導していたわけですが、今年の1月末、ご家族と一緒に日本へ帰国すると聞きました。英国とブラジルでの計14年間を振り返っていただけますか?
「当初、英国には1年間だけ滞在する予定でした。ところが、代表コーチを務めるチャンスをいただいて滞在が延び、ロンドン五輪を経験することができました。そこからブラジル柔道連盟からオファーをいただき、さらに12年間をブラジルで過ごした。全く予想しなかったことが、次から次へと起きました。周囲の人たちに助けられ、家族の全面的なサポートもあって、本当に幸せな日々を過ごせました」
――この時期に日本帰国を決意された理由は?
「いくつかあります。自分と夫のキャリアのためでもあり、子供3人の教育のためでもあります」
――今後、日本ではどのような仕事をされる予定でしょうか?
「まだすべてお話しできる段階ではないのですが、複数の団体から『スポーツの価値、柔道の価値を高めるための活動を手伝ってほしい』というお話をいただいています。将来的には、日本とブラジルの架け橋となれるような自分自身のプロジェクトを立ち上げることも考えています」
裕子さんをサポートした夫の経歴とは
日本で柔道選手としてのキャリアを積んだ元アスリートにして、教育学を修めた教育者でもある。そして英国で英語を、ブラジルでポルトガル語を習得し、両国であらゆる年代、レベルの選手たちに柔道を教えてきた。この多彩な経験を生かし、日本でも彼女にしかできないユニークで実り多い活動を期待したい。
そんな裕子さんが「彼のサポートなくして、私はブラジルで柔道の指導はできなかった」と深く感謝するのが、夫の陽樹さんだ。

