「ネガティブになる選手は行かせない」“箱根駅伝4連覇”青学大の黄金期に“二軍寮”出身者はなぜ伸びた？…経験者が語る原晋監督「スゴイ観察眼」 

　田村さんや池田さんは半年で一軍復帰を果たしたが、もちろん半年後に町田に帰れることが全員に保証されているわけではない。町田寮は原監督夫妻が管理人を務めているが、二軍寮は監督たちの目が届かないところにある。代わりにマネージャーが寮生活を管理しており、池田さんたちの場合は三潟マネージャーが管理人代わりだった。

「二軍寮のマネージャーは、コーチであり監督・トレーナーでもある……ぐらいの位置付けで置かれているので、朝練習などでは細かく走りを見てくれました。選手8人を2人のマネージャーが見るわけですから、マネージャーと選手との距離は近いんです」（池田さん）

監督の目が届きにくい…求められた自律心

　ただ、裏を返せば学生主体で寮生活を運営するのだから、いくらでも抜け道があるとも言える。だが、マネージャーたちは厳しく選手たちに接し、選手も自らを律してモチベーションを高く保っていた。だからこそ、4人は二軍寮でも成長することができた。池田さんはこう振り返る。

ADVERTISEMENT

「町田寮の選手は、町田から相模原キャンパスまで片道約5kmを走っていくんです。それがウォーミングアップになり、ダウンジョグにもなる。でも、我々は競技場がすぐ近くなので、そのジョグがないんです」

　朝練習も片や一軍は原監督が見ている中で行う一方、二軍ではマネージャーがいるとはいえ、野放しにされている状態に近い。

二軍は朝練習も原監督の目が届かない。それだけに自律心が試される環境ではあったという　©Takashi Shimizu

「ゆっくり走ろうと思えば走れるし、10分、20分で切り上げることもできます。だから、サボろうと思えばいくらでもサボれる。そういう意味では試されている環境でした。でも『二軍にいる』という危機感は常にあるわけで、自律というか、気持ちを高め続けないといけない部分がありました」

　スピードに自信がなかった池田さんは、監督に目に見える成長をアピールするため、二軍寮にいる期間にひたすら距離を走り込んだ。だが、三潟マネージャーに走り過ぎを注意されることが度々あったという。

「三潟さんは私のことをすごく見てくれていて、例えば前日にジョグをやり過ぎていた時には『今日は練習量を落とした方がいい』と言ってくれました」

【次ページ】　二軍落ちで「ネガティブになるタイプ」は行かせない？