偏差値72“北海道No.1進学校”から「まさかのドラフト1位」のナゼ…17年前、楽天に入団“ナゾのドラ1”の正体　指名の瞬間は「球技大会でバスケを…」 

　予想外の1巡目指名。当時のドタバタ劇を寺田が思い起こす。

「バスケをやっていた紫色のジャージーのまま、校長室に直行しました。うちの学校は制服じゃなく私服なんで、『こんなダサいカッコのまま取材を受けんのか？』とか考えていたような気がしますね」

　報道陣による写真撮影では、野球部のチームメートたちに肩車されながらガッツポーズする、ユニフォーム姿の寺田がいた。

ADVERTISEMENT

　楽天のドラ1となった進学校のエース。日常が変わっていく。

　学校の廊下を歩いていると、生徒たちが勝手に道を空けてくれ「楽天に入る人だ」と小声で話し合っているのがわかった。札幌の街でも同じで、札幌南の野球部だとわかると、知らない人から声を掛けられるようになった。

「なんで寺田が1巡目？」…スカウトが語った理由

　現実世界の祝福ムードは、寺田自身も実感できる現象だった一方、その裏、ネットの世界はざわついていた。

＜なんで寺田が1巡目なの？＞

　疑問視する投稿で溢れかえる。名もなき声は次第にエスカレートしていき、＜球団が1巡目指名のパソコン入力を誤った＞＜北海道だから、リストの一番上にあった寺田をそのまま指名した？＞といったように、謎が謎を呼び、寺田は勝手に“疑惑の男”とされた。

　今でこそ、その事実を知る寺田が「まあ、なんて言われてもよかったんですけど」とやり過ごすように、当時の彼もまた「楽天の1巡目指名」を光栄と受け取っていた。

「挨拶に来てくれたスカウト部長さんと担当スカウトの方が、自分を指名してくれた想いをしっかりと伝えてくれていましたし、『なんで自分が1位なんだ？』みたいに疑問に思うことはなかったですね」

　球団には、寺田を最上位で指名した明確な根拠が存在していたのだという。

　岩隈久志のようになってほしい――。

　高校時代は無名の存在ながら、190センチの長身で将来性を見込まれ近鉄に5位入団を果たした当時の楽天のエースに、球団は185センチで「手足も長く、全身にバネもある」と、寺田を重ね合わせたのである。

　札幌南初のプロ野球選手。

　この時点での寺田は、楽天にとって「将来のエース候補」だった。

＜次回へつづく＞

#2に続く

「なんで…空振りが取れないんだ？」偏差値72“北海道No.1進学校”出身ドラ1投手が受けた“プロの衝撃” 1年上の田中将大は…「全然、レベルが違った」