偏差値72“北海道No.1進学校”から「まさかのドラフト1位」のナゼ…17年前、楽天に入団“ナゾのドラ1”の正体　指名の瞬間は「球技大会でバスケを…」 

　それでも、寺田は一抹の不安を抱えていた。

「プロに行くなら、日本ハムの“地元枠”かなと思っていたんですけど、調査書が来なかったんですね。だから『指名されないんじゃないか』とは思っていましたね」

　夏の南北海道大会準決勝で函館工にサヨナラで敗れ、プロと並ぶ大きな目標である甲子園を逃した寺田は、ここから担任の申しつけ通り大学受験モードへとシフトした。

ADVERTISEMENT

　第一志望は慶應大。これには理由があった。

「最終的な進路がプロ野球選手であることは変わらなかったんで、強い大学で野球を続けたいのがあって。なので、落ちたとしても浪人して、次の年にまた慶應か早稲田に挑戦しようと思っていました」

　ドラフトでの指名を視野に入れ練習をしていたが、その比重は受験勉強に傾いていた。学科試験ではなく、小論文や面接が合否の対象となるAO入試での突破を目指す寺田は、慶應大に進学していたOBに論文を添削してもらうなど机にかじりつく。エネルギー関連をテーマとした中身に手応えを得られるほど、受験勉強は順調だった。

可能性を感じていた地元・日ハムからは調査書が届かず、慶大進学を第一志望にしたという　©︎Genki Taguchi

運命のドラフト当日…校内では球技大会が

　2007年10月3日。

　高校生ドラフトが開催されるこの日、札幌南では球技大会が行われていた。

　プロ志望届を提出していたとはいえ緊張も昂揚感もなく、他の生徒と同じようにバスケットボールのコートを走り、リング目がけてボールを放っていた。

　驚きの一報は、同じクラスの女子生徒からもたらされた。

「おめでとう！」

　クラスが決勝に進んだことを祝ってくれているのだと、寺田は思っていた。それが間もなくすると、今度は野球部員が血相を変え、叫びながら自分の元へと向かってくる。

「寺田、1位だぞ！」

　5球団が競合した仙台育英の剛腕・佐藤由規を外した楽天が、自分を1巡目で指名したというのだ。寺田の周りにはすぐさま人だかりができ、球技大会どころではなくなった。野球部のエースが指名されるか懐疑的だった学校も記者会見場を設けておらず、寺田は教師から「校長室へ行け」と促された。

【次ページ】　「なんで寺田が1巡目？」…スカウトが語った理由