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「寝起きで来たのかなというときも…」大谷翔平インタビュアーが明かす“難しさ”とは?「ささやかな幸せとは何か…大真面目に考えてくれるんです」
text by
石田雄太×糸井重里Yuta Ishida & Shigesato Itoi
photograph byNanae Suzuki
posted2025/01/15 11:00
大谷翔平唯一のインタビュー本『野球翔年II MLB編2018-2024 大谷翔平ロングインタビュー』の著者・石田雄太に、対談の名手である糸井重里が迫る「大谷翔平論」
石田 そうですね。確かに大谷選手はインタビューするのが難しい相手ですね。もちろんそれぞれの選手にいろんな難しさはあるんですけど、大谷選手の場合はまずシンプルにエンジンのかかりが遅い日とすごく早い日がある。
寝起きで来たのかなというときも…
糸井 日によって違うんですか。
石田 限られた時間でのインタビューなので、エンジンのかかりの遅いときは困りますよね。エンジンのかかりが遅いか早いかの理由はよくわからないんですけど。寝起きで来たのかなというときもあるし。ただ、エンジンのかかった後っていうのは、止まらないくらいしゃべるんです。その話だけで終わると困るから早く次の話いかなきゃと思うくらい。はまっちゃうとずーっとそのことについて話してくれる。そういう難しさですね。
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糸井 ああ、そっちは僕が好きなタイプですね。話がどこにいってもふたりが決めればいいんだっていうところがあるから。テレビも雑誌もインタビューは最低限、いくらくらいの商品にしようっていう約束があるんですけど、僕がほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)を作った理由は、それなしで成立するメディアを作りたかったんです。仮に大谷翔平が、ふるさとの小川についていつまでもしゃべるなら、どこまでもつきあうよっていうのが僕のやり方なんです。ただこれは商売にはならないわけですよ(笑)。商品は他でも売ってるから、そういうのがあってもいいよねっていうのを楽しむというか。世界全体を豊かにするというか。そういう仕事だと思ってるんですけど。
石田 大谷選手に関しては、言葉を発する機会が限られている選手でありながら、彼の言葉を待っている人がものすごく多いので、自分が間に立つという責任感もことさらですね。多くの人が聞きたいであろうことを外せないですし。だけど、ご本人が気持ちよさそうに話すことに付き合いたいという気持ちももちろんあります。
糸井 石田さんだって元はそっちの方でしょう? ファン気質から始まったスポーツライター(笑)。
石田 そうですね、野球選手にまっさきに、誰も知らないことを聞きたい。それが取材の動機なので、本当は聞いたところで終わりたいんですけど。
糸井 そこまでぼくと一緒ですね。
「ささやかな幸せ」を大谷は何に感じるか
石田 ただ、なぜ自分が話を聞けるかというと、仕事だから。そうなるとアウトプットしないわけにはいかなくて(苦笑)。聞きたいことを聞けたという僕の満足感と、大谷選手を好きな人が聞いてほしいと思っていることは大きくずれてないと思いながら、まだあの話も聞いてないというのはどうしても出てきます。野球以外の話を聞きたい人もいるでしょうし。そういう人が聞きたい話というのも背負ってるんですよね。僕が彼にインタビューするときに必ず最後に、「今、ささやかな幸せを感じる瞬間ってどんなときですか」って聞くんですけど。