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「本田圭佑、長友佑都たちに置いていかれたなって…」細貝萌(38歳)が引退後に初めて明かすザッケローニ監督との会話「逃げかけていた自分がいた」
posted2024/12/19 17:02
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
“無双の香川真司”を封じベストイレブンに
欧州を舞台にする日本人フットボーラーでデュエルといったら日本代表キャプテンの遠藤航をまず思い浮かべる人が多いに違いない。
つい10年ほど前は、バッチバチの細貝萌の“専売特許”であった。
ブンデス1部に昇格したアウクスブルクでの2011~12年シーズン、香川真司を擁するドルトムントとの一戦はあまりに有名である。香川にマンマークを仕掛けてボールを好きなように触らせず、粘着感たっぷりに封じ切ったことでドイツ誌キッカーの当節ベストイレブンに初めて選ばれた。8連勝中だったドルトムント相手に無失点で乗り切ったのも細貝なしでは語れなかった。
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細貝は言う。
「自分というよりも、真司がそれだけ凄かったっていうことですよ。ブンデスで無双している彼を止めたらベストイレブンなんですから。でも、これで明らかに“この日本人選手と対峙するの嫌だな”って思ってもらえたというか、自分のストロングポイントを再確認できたのは確かです。僕はハッキリ言って技術もないし、背も高いわけじゃないし、スピードもパワーもない。あるのは情熱だけ。そこはもう負けちゃいけないと思ったし、デュエルの部分で勝負しよう、生きていこうという感覚を持つことができました」
走り、闘い、しつこく、タフに。
ブンデスでレギュラーを張る細貝の株は上がり、翌12~13年シーズンにはレンタル元である強豪レバークーゼンへの復帰が決まる。アウクスブルクからは残留オファーが届き、ニュルンベルクからも声が掛かっていたという。
「ドイツのメディアにアウクスブルクの強化の人のコメントが載っていたんです。『もし戻ってきてくれるなら自転車でレバークーゼンに迎えに行く』って。本当に嬉しかったですね。でも自分のなかでここはレンタル元のレバークーゼンに戻るべきタイミングだし、勝負したいってシンプルに思いました」
一番、自分のなかで覚えている試合
タレントが集まるレバークーゼンでは激しい競争にさらされ、最初はサブに回った。それでもユーティリティ性を発揮して、ケガで離脱したチェコ代表ミハル・カドレツに代わって左サイドバックのポジションを射止める。バイエルン・ミュンヘンとの一戦で開幕9戦目にして初先発。アウェーながら勝利を収めたことで起用が続いていく。