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「95%、監督業から引退する」J2降格・札幌を退任したミシャ監督の真意は? 「J1指揮600試合」は見られないのか…直撃に語った「残り5%」の意味
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佐藤景Kei Sato
photograph byKei Sato
posted2024/12/14 17:00
J1最多の594試合を指揮して退任するミハイロ・ペトロヴィッチ監督(67歳)。本当にこのまま引退してしまうのだろうか
「来年は東京と札幌よりも、もっと距離が近くなるかもしれない。そうすれば、簡単に会えるでしょう」
監督を続けるとまでは明言しなかったが、少なくともその時点では意欲があったと思われる。誕生日目前のミシャに、こちらが柏レイソルで72歳まで監督を務めていたネルシーニョの例を挙げ、「まだまだ監督を続けられる」と伝えると、ニヤリと笑顔を見せていた。その攻撃サッカーを引き続き日本で見られるのだと、安心したものだ。
愛するクラブの降格
そんな指揮官がひとまず監督業に区切りをつけることにしたのには、大きな理由があった。愛するクラブの降格が現実になったからだ。
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「これまで話してきた通り、札幌は私にとって特別なクラブだ。札幌のサポーターはどんなときもサポートしてくれた。そんな特別なクラブを降格させた責任が私にはある。自分自身の仕事に失望しているというのが今の正直な気持ちだ。そのクラブを置いて、すぐに自分だけ新しいクラブで仕事をするのは私のスタイルじゃない」
『ミシャ式』の誕生
苦しむサンフレッチェ広島の立て直しを託されて2006年シーズン途中に来日したミシャはその年、チームを見事に残留させたものの、翌年、攻撃サッカーに大きく舵を切ると、守備が崩壊。若いチームは負けを繰り返すサイクルにはまってJ2降格の憂き目に遭った。だが、当時の広島の久保允誉社長が鶴の一声でミシャの続投を即決し、その結果、2008年にJ2で歴史に残る強さを見せつけ、1年でJ1復帰を果たした。
そのタイミングで生まれたのが、『ミシャ式』と呼ばれる3−4−2−1の可変システムだった。以降、指揮官は広島でも、浦和でも、そして札幌でもこのミシャ式をベースとした。マイナーチェンジをしながらも、移り変わりが激しいサッカーの世界でこれほど長きにわたって有効だった戦い方もない。以前、ミシャは「通用しないなら違うことをやっている」と話したことがある。今季の低迷の理由も他にあると考えていた。
新戦力を起用しなかった理由は…
クラブは夏の移籍期間に7人を補強し、V字回復を狙ったものの、劇的な効果を生むには至らなかった。新戦力のキングロード・サフォ、アマドゥ・バカヨコ、ジョルディ・サンチェスという3人の外国籍FWとMFのフランシス・カンをいっこうに起用しない指揮官の判断については一部で批判の声も上がった。そのことに関する考えは、こうだ。

