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「結果だけ見て…悔しいです」日本人対決でなぜ“明暗”が分かれた? 伊藤美誠の涙に思い出す、“黄金世代”と対峙した福原愛・石川佳純の必死さ
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/29 11:01
WTTファイナルズ福岡1回戦で大藤沙月に敗れた伊藤美誠
「周りの人たちに、『下がったな』と思われるのは、すごく自分の中で辛いです」
日本卓球界は、大藤に限らず、若い世代が台頭している。同じ日本人選手の対戦で敗れるケースも以前と比べれば増えている。その状況があるからこそ、他の選手に比べて力が下がった、地位が下がったとみられかねないことが第一人者として辛かった。
「結果だけ見て(日本選手の)同士打ちで負けるようになったなと思われるのが悔しいです」
内容をみれば、どちらに転んでもおかしくないような接戦だ。伊藤のプレー自体も、決して力が落ちたというものではなかった。しかし同時に、スポーツは結果が大きく問われもする。伊藤もそれを熟知するだけに、敗れたという事実が悔しかった。
“黄金世代”と対峙した福原愛、石川佳純の姿
思えば、伊藤が台頭してきた頃、その突き上げを受けつつ、福原愛や石川佳純は懸命に日本代表であろうとし、世界で勝てるよう努力してきた。伊藤もまた、同じ立ち位置にいる。しかも伊藤が頭角を現した頃よりも、日本の卓球はレベルが高くなり、層も厚い。日本勢の中での競争はよりハードになっている。
WTTファイナルズののち、世界ランキングが更新された。中国の選手5名が上位を占め、早田ひなが日本選手では最上位となる6位にいる。続いて7位に張本美和、8位に大藤、そして伊藤は10位と日本勢で4番手。以前よりも多くの日本選手が上位につけていること、そして張本、大藤と伊藤より若い選手が上にいる。
それでも伊藤の気力に衰えはない。パリ五輪の代表に選ばれなかったあと、世界ランキングで1位になることを新たな目標として掲げ、海外を転戦してきた。世界の上位で今も戦い続け、長年、第一線に立ち続けている。
「結果で挽回したいです。(試合を)見ていない方にも、『挽回したな』『動けるようになってきたな』と思ってもらえる選手になっていきたいです」
と巻き返しを期す。