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指名漏れの瞬間は「もう…忘れられなくて」ドラフト“史上最多”6人指名の富士大「唯一の指名漏れ」選手が明かした胸中…心に期する2年後の下剋上 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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posted2024/11/27 06:00

指名漏れの瞬間は「もう…忘れられなくて」ドラフト“史上最多”6人指名の富士大「唯一の指名漏れ」選手が明かした胸中…心に期する2年後の下剋上<Number Web> photograph by Genki Taguchi

ドラフト会議で6人が指名された富士大で「唯一の指名漏れ」となった佐々木大輔。卒業後は社会人へ進み、2年後の捲土重来を期す

 春の北東北リーグで首位打者とホームラン王を獲得し、ショートでベストナインにも選出。本人もここから「目標がプロに固まった」と言う。

「3年の春に結果を出せて自信になりましたし、そこからもっと練習とか私生活への取り組みも変えようと思うようになりました」

 なかでも佐々木が注力したのが食生活だった。食べる量はもちろんのこと、たんぱく質などそのときに足りない栄養素を考慮しながら自炊し、管理していったという。身長175センチに対し、体重は入学時より10キロ以上もアップする90キロと、成果は目に見えて表れた。パフォーマンス面でも、3年秋に打点王、ドラフト前最後のアピールとなる4年秋にもベストナインと結果を出した。

 そうして迎えた、野球人生の分岐点。

 ドラフトの前夜こそ思ったより眠れたというが、当日の10月24日に午前中の練習を終え、午後に会見場に足を踏み入れたときから胸の鼓動が急激に高まっていった。緊張と不安。「五分五分」の感情を抱えた佐々木は、それらを落ち着かせるために必要以上にペットボトルの水に手を伸ばしていた。

 1位で麦谷の名が呼ばれ、2位に佐藤、3位に安徳と、プロ志望届を出した7人中3人が上位指名と富士大のドラフトは幸先がよかった。会場が沸いている最中においても佐々木に光明はなく、「なんとか、指名されてほしい」と祈るばかりだった。

指名漏れの瞬間は…「忘れられない」

 希望が絶たれた瞬間は、今でもはっきりと覚えている。それは、12球団で唯一、7巡目まで指名していた西武が、8巡目を指名せず「選択終了」を宣言したときだ。

「周りからは『最後にあるぞ』と言われていたんですけど、呼ばれなくて。あの瞬間というのはもう……忘れられなくて、とにかく悔しかったですね」

 育成ドラフトが始まると、佐々木はまだ名前が呼ばれていない坂本、長島とともに会見場の最前列に移動した。

 実はこの時点で、佐々木は「プロに行けない」とわかっていた。というのも、以前から声を掛けてくれていた社会人チームに筋を通すために、「支配下で指名されなければお世話になります」と約束していたからだった。つまり佐々木は、“支配下縛り”でドラフトに臨んだわけである。

【次ページ】 監督から「2年後のドラフトはもう始まっている」と…

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