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指名漏れの瞬間は「もう…忘れられなくて」ドラフト“史上最多”6人指名の富士大「唯一の指名漏れ」選手が明かした胸中…心に期する2年後の下剋上
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2024/11/27 06:00
ドラフト会議で6人が指名された富士大で「唯一の指名漏れ」となった佐々木大輔。卒業後は社会人へ進み、2年後の捲土重来を期す
その事実を公表していなかったため、育成ドラフトへと移行してからも会場に残っていた佐々木が、抱いていた胸中を明かす。
「そこはもう、諦めるしかなかったというか。あとは坂本と長島の名前が呼ばれるまで、ふたりを応援するだけでしたね」
坂本と長島の名が呼ばれ、ドラフトで指名された6人が、カメラが放つ無数のフラッシュに包まれる。プロへと巣立つ彼らを遠目で眺めていた佐々木は、「複雑な気持ちでした」と言葉を漏らすが、ドラフト後にチームメートが「ご飯に行こう」と誘ってくれたことで悔しさを紛らわすことができたし、なにより救われたのだと頭を下げた。
それでもまだ気落ちしていた佐々木の心を切り替えさせ、再び前を向かせてくれたのが、監督の安田だった。
監督から「2年後のドラフトはもう始まっている」と…
ドラフトの2日後には、明治神宮大会出場を懸けた代表決定戦があり、そこへ向けてこのようにハッパをかけられたのだという。
「代表決定戦にもスカウトが来てるからな。ここで打てば『やっぱり獲っておけば』と後悔させられるかもしれないし、『これからも佐々木を見ておいてください』と報告が行くはずだから。2年後のドラフトは、もう始まっていると思ってやれよ」
佐々木は仙台大との決勝戦で同点タイムリーを放つなど、2試合で3安打と気を吐いた。
だが、明治神宮大会では、創価大との初戦で快音を響かせられず、チームも敗れた。「まだまだ反省するところはあります」と表情は険しかったものの、「気持ちはもう切り替わっています」と終始、俯くことはなかった。
戦は、すでに始まっている。
佐々木は「2年後」と、何度も口にしていた。高校で野球を辞めようとしていた青年は、今やプロへの意識が一層、強くなっている。
「社会人で頑張って、2年後、ドラフトの上位でプロに行くという目標を立てました」
仲間たちの声が聞こえる。
指名漏れの悲劇から一歩ずつ踏み出すたびに、先にプロの道に進む6人やチームメートたちの激励が、佐々木のなかで反響する。
「2年後、プロになるお前を待ってるぞ」