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東京五輪直前に竹刀で左目負傷…あの“空手パワハラ騒動”とは何だったのか? 植草歩32歳の告白「週刊誌記者に自宅を直撃され…嫌がらせの手紙も」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byTakashi Shimizu

posted2024/11/30 11:04

東京五輪直前に竹刀で左目負傷…あの“空手パワハラ騒動”とは何だったのか? 植草歩32歳の告白「週刊誌記者に自宅を直撃され…嫌がらせの手紙も」<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

東京五輪直前、空手界の“パワハラ騒動”の被害者として取材攻勢を受けた植草歩。当時の思いや苦しみをはじめて明かした

──なるほど。

植草 もうひとつ、言わなかった理由として、当時「空手はケガのないスポーツ」としていた手前、ケガのことは言いたくなかったというのもあります。でも、ケガのないスポーツというのはない。ケガをする確率をいかに下げるか、そしてケガをしてしまったときにどうケアするかが大切です。いまはスポーツ科学がどんどん発展してきて、ちゃんと休んでリハビリをして戻す方が早い競技復帰につながるとわかっている。いまでも「もう練習はやめなさい」とケガをしている子に伝えても、「いや、痛くないです」と続けようとすることがあります。「それは全然いいことじゃないよ」と諭すけど、そういう子は無理をしてでもやろうとするんですよね。それを止めるのがコーチである自分の役割だと考えています。

「根性という言葉は使わない」植草歩が目指す指導者像

──努力と根性は似て非なるもの、ということですね。

植草 そうです。だから私は生徒たちによく「努力を履き違えないでほしい」と訴えています。「ケガをしたら、すぐ病院に行きなさい。迅速に診断してもらうことがベストだよ」と。生徒の前では、「根性」という言葉を使わないようにしていますね。

──指導の現場では当たり前に使われますが、「根性」は本当に微妙な言葉です。

植草 私は使わない。現役時代は「お前は根性がない。だから弱いんだ」と散々言われましたけどね(笑)。でも、根性ってホント難しい。稽古をするうえで大事なときもあるけど、その一方でスポーツ科学に則った練習と矛盾することも多々ありますから。

──現役時代は体罰を受けていましたか?

植草 いや、私はほとんど受けなかったです。でも、受けている子はいました。それを目の当たりにして、私は怖かった。教え子を萎縮させて、成長につながるとは到底思えない。怒鳴ったり叩いたりする人は、語彙力や指導力が足りていないんじゃないか、というのが正直なところです。怒ったから殴りたい、怒鳴りたいなんて絶対に思わない。どんなことがあっても、生徒には穏やかに接することを心がけています。いわゆるアンガーマネジメントですね。

――植草さんが理想とする指導者像とは、どんなものなのでしょうか。

植草 やっぱり正しく技術を教えることや、言葉で伝えることを諦めたくない。現役時代、いい思いもつらい思いもたくさんしてきたからこそ、伝えられることがある。空手に育ててもらった人間として、安心して子どもを任せられる指導者でありたいと思います。

<第1回、2回とあわせてお読みください>

#1から読む
空手世界王者が“プラスサイズモデル”に…いったいなぜ? 植草歩32歳が語った“意外な理由”「体重やスリーサイズが出るのは恥ずかしいけど…」

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