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東京五輪直前に竹刀で左目負傷…あの“空手パワハラ騒動”とは何だったのか? 植草歩32歳の告白「週刊誌記者に自宅を直撃され…嫌がらせの手紙も」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byTakashi Shimizu

posted2024/11/30 11:04

東京五輪直前に竹刀で左目負傷…あの“空手パワハラ騒動”とは何だったのか? 植草歩32歳の告白「週刊誌記者に自宅を直撃され…嫌がらせの手紙も」<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

東京五輪直前、空手界の“パワハラ騒動”の被害者として取材攻勢を受けた植草歩。当時の思いや苦しみをはじめて明かした

──そういう構図になっているわけですね。

植草 いろんな嫌がらせもありました。いまだに謝罪を促す手紙が届いたり、自宅を捜されたり……。この一件があるまで嫌がらせなんてされたことがなかったので、そういう人たちの気持ちを知ることができた、というのはあります。彼らにとって、大事な師範を傷つけてしまったわけですからね。だからこそ可能なかぎり穏便に解決できればと思っていたんですが……。メディアとの関わり方は本当に難しいと思いました。

“骨折をして優勝”を隠した理由「美談にしてはいけない」

──2013年には女子柔道の強化選手へのパワハラが問題となり、罵詈雑言を浴びせ、暴力をふるっていた当時の女子の代表監督も辞任に追い込まれました。

植草 昔だったら監督やコーチの「絶対に他言するな」の一言で隠蔽できたかもしれないけど、いまのご時世ではもう隠せませんよね。

──ハラスメントについての認識が広まり、個々人がSNSで発信することもできる。指導者の権力が絶対だった昔とは明らかに異なります。

植草 やっぱり、隠せない方がいいんじゃないかと思います。第三者の目が入ることで、どんどん歪みが見えてくる。ただ、すべてを詳らかにするのがいいのかという側面もあって……。これは少し別の話なんですが、自分の場合、試合中に目の骨が折れたけど、そのまま試合に出て初めて日本一になりました。でも試合後、骨折のことはあえて言いませんでした。

──なぜですか?

植草 口にしたら、美談になるじゃないですか。“骨折してまで試合に出て優勝した植草歩”ということになったら、子どもたちも絶対に真似をしてしまう。だからあえて言わなかったんです。

──2015年の全日本空手道選手権での出来事ですね。

植草 はい。いまの子どもたちが同じ状況で試合を強行することがあってはいけない。当時の自分には懸けているものがあったので仕方なかったかもしれないけど、小学生、中学生、高校生など成長期の選手たちが影響されたら、大ケガをしたときに正しい判断ができなくなってしまう。

【次ページ】 「根性という言葉は使わない」植草歩が目指す指導者像

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