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東京五輪直前に竹刀で左目負傷…あの“空手パワハラ騒動”とは何だったのか? 植草歩32歳の告白「週刊誌記者に自宅を直撃され…嫌がらせの手紙も」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byTakashi Shimizu
posted2024/11/30 11:04
東京五輪直前、空手界の“パワハラ騒動”の被害者として取材攻勢を受けた植草歩。当時の思いや苦しみをはじめて明かした
──問題は竹刀を用いたことよりも、それ以外の部分にあった、と。それは例えば、自尊心を傷つけるような発言や高圧的な指導、ということになるのかもしれませんが……。
植草 でも、やっぱり竹刀でケガをしたという事実もあるので、メディアはそこにフォーカスするじゃないですか。私が伝えたかったのは違うところにあるのに……。でも、それがメディアのあり方で、仕方がないとも思うんですけどね。
週刊誌の記者が自宅を直撃「本当に怖かった」
──空手が五輪競技になったとき、植草さんは日本の空手選手の代表としてメディアに取り上げられ、知名度を高めました。しかしこのときは、全く違う形でメディアに露出することになってしまった。
植草 当時も言葉を選んで真実を伝えたつもりだったけど、人によって受け取り方は違う。それは自分が師範に対して話をしたときもそうだったと思います。そういった言葉の行き違いもあるから、言葉の選択は本当に難しいなとあらためて感じました。
──自分の思惑通りに相手に伝わるとは限らない。
植草 そうですね。場合によってはこちらのメッセージとは真逆に受け取る人もいるわけですから。
──あの騒動があって、立ち直るまでに時間を要しましたか?
植草 はい。自分はメディアのおかげで成長することもできたし、空手界を盛り上げることもできた。でも騒動のときには初めてメディアの怖さを感じました。週刊誌の記者が家を訪れたりもしましたし……。
──家まで直撃取材に?
植草 来ましたね。(帰宅して)私の部屋に灯りが点いてからピンポンを鳴らされるんですよ。直接目を合わせることはなかったですけど、本当に怖かったですね。
──冷静に考えると、少なくともこの件に関して植草さんに非があるわけではない。それが大前提であるにもかかわらず、一部のメディアからはバッシングを受けました。
植草 それもメディアのあり方ですよね。これは知人から聞いた話ですけど、師範は私に対して何も思っていないと聞きました。自分も師範に対して嫌悪感はない。でも、師範を慕っている方からしたら、いまだに私のことはよく思っていない。