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東京五輪直前に竹刀で左目負傷…あの“空手パワハラ騒動”とは何だったのか? 植草歩32歳の告白「週刊誌記者に自宅を直撃され…嫌がらせの手紙も」

posted2024/11/30 11:04

 
東京五輪直前に竹刀で左目負傷…あの“空手パワハラ騒動”とは何だったのか? 植草歩32歳の告白「週刊誌記者に自宅を直撃され…嫌がらせの手紙も」<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

東京五輪直前、空手界の“パワハラ騒動”の被害者として取材攻勢を受けた植草歩。当時の思いや苦しみをはじめて明かした

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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Takashi Shimizu

 通算4度の年間世界王者、全日本選手権4連覇など数々の戦績を残し、現役を引退した空手選手・植草歩。だが、その空手道は華々しいだけではなく、波瀾と苦難に満ちたものでもあった。プラスサイズモデルへの挑戦、“空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ”と呼ばれた現役時代の葛藤、そして東京五輪直前のパワハラ問題……。現在は日本体育大学柏高等学校で後進の指導にあたる植草が、Number Webのロングインタビューに答えた。(全3回の3回目/#1#2へ)

あの“パワハラ騒動”の真実「竹刀の話ばかりが膨らんで…」

──指導者となった現在、どうしても避けて通れない問題があります。東京五輪直前の2021年3月に表沙汰になった“パワハラ騒動”です。同年1月、全日本空手道連盟の強化委員長であり、植草さんの母校・帝京大の師範も務めていた香川政夫氏が稽古に用いた竹刀が左目を直撃。「左眼球打撲傷」と診断され、指導現場でのパワーハラスメントとして新聞・テレビなど多くのメディアで報道されるに至りました。

植草歩(以下、植草) そうですね。ただ、あの件は師範と私の問題。できることなら当事者間で解決したかったのに、望まない形で表沙汰になってしまい、一時は人間不信にもなりました。

──師範との話し合いで解決したかった、と。

植草 いま私がここにいるのは師範のおかげです。師範のおかげで強くなれたし、成長することもできた。そこには本当に感謝しているので、師範を否定したいとはまったく思わない。ただ、あの当時、精神的・肉体的に追い詰められていたのも事実です。

──受ける側は防具をつけることも許されず、植草さんの前にも同じ練習をしている最中にケガをした選手もいる。しかも植草さんの場合、2015年に左眼の内壁を骨折して手術を受け、左眼付近には現在でもプレートが入っており、執刀した医師から「次に左眼を負傷した際には失明するおそれもある」と宣告されていたと聞きました。両者の見解が食い違うところもありますが、事実認定された部分だけを見ても明らかに行き過ぎた練習のように思います。

植草 そうですね。竹刀を用いたことは、事実としてよくないと思う。師範には恐怖心があったことも伝えましたが、「そこがお前の弱さだ」と指摘されていたので、それ以上言えなかったというのもあります。ただ、結果的に「竹刀の話」ばかりが膨らんでしまって……。

【次ページ】 週刊誌の記者が自宅を直撃「本当に怖かった」

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