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「普通は獲っちゃいけない選手。でも…」スカウトが語った日ハム5位指名・山縣秀の「異質」…偏差値75“全国屈指の進学校”から異例のプロに
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2024/11/19 06:00
ドラフト会議で日ハムから5位指名を受けた早大・山縣秀。スカウトが「普通は獲っちゃいけない選手」と言うワケは?
批判もあった独自のスタイルを「正解」に…
リーグ戦での山縣遊撃手のプレーを10試合以上見ているが、彼のスローイングに破綻があったのを、私は一度も見ていない。
彼の動きの根本にサイドスローが自然に合致しているから横から投げるんだ。そう考えるのが、自然なのではないか。
なにより、これまで各方面から苦言や貴重なアドバイスをいただいておきながら、結局最後まで平然とサイドスローを通した。三遊間の深い位置からも、一塁走者と接触しそうな併殺プレーでも、サイドから痛烈で正確な一塁送球を繰り返し、認められて支配下ドラフト5位指名となった。であれば、山縣秀のサイドハンドは「正解」だったのだ。
早慶戦を見に行けなかったので、優勝決定戦となった明治大戦をネット裏から見せてもらった。
いつもの「2番ショート」……しかし、今日は同じ土の上を、明治大の「名手・宗山塁」も守る。
リーグ戦最後の試合、勝ったほうが優勝の一戦で、お互い守って意識しないわけがない。
宗山塁の詰まったショートゴロが、山縣秀の前に転がる。山縣秀、まるでみんなに見せているような「白鳥の湖」で、たおやかにさばく。
今度は、山縣秀の打球が三遊間に飛ぶ。横っ飛びに捕らえた宗山塁、この時とばかり、大上段から矢のようなストライクスローで内野安打を許さない。
これをまた、悔しくないはずはないのに、山縣秀、惜しげもなくサッと涼しい顔でベンチへ引きあげるのだから、きっと内心、メチャメチャ意識していたはずだ。
結局この日、ノーヒットに終わった山縣遊撃手。
それでも、一死ランナーなし。長打を狙ってもよい場面では、本当にホームランを狙っているような渾身のフルスイングを何度か見せた。
華麗な守備ワークで多くの目を惹きつけた一方で、打てない、非力だ、小技だけ……などと言われ続けた山縣遊撃手の「打者」としての意地を見た。