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「まさか最後にコケるの?という感じ」世界女王・坂本花織があえて“世界一にこだわらない”ワケ…五輪に向けて掲げた“意外な目標”とは?
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2024/11/17 11:30
NHK杯で今季世界最高点で優勝した坂本花織
「『とにかく今日は楽しんでやろう』という気持ちで挑みました。3連続ジャンプが決まったところから自分のペースになって、次の『3回転+3回転』は『後半どうなろうといい、思い切って決めよう』という気持ちで跳びました」
前半から飛ばしたぶん、後半は息があがってきた。
「体力が持つかどうか、微妙でした。でも最後のコレオシークエンスに入る前に、中野先生とグレアム(充子)先生が『頑張れ!』と言ってくれて、『もう頑張るしか無い!』と。最後2つのジャンプは踏ん張りました」
「まさか最後にコケるの?」という感じ
すべてのエレメンツを終え、膝をついてフィニッシュの演技をしようとした瞬間、体勢がグラついた。
「スピンまでは絶対気を抜かないでおこうって思って集中していたのですが、最後のニー・スライドで『よっしゃ!』という気持ちになったら、かかとが引っかかり『まさか最後にコケるの?』という感じでした」
やりきった表情で得点を待つ。フリーの152.95点が表示されると、右手でガッツポーズ。総合231.88の今季世界最高点がコールされると、思わず立ち上がった。
「今日は、守りに入るのは自分らしくないと気づけたので、良い試合になりました。新しいジャンプを今回は成功したけれど、次も、その次も成功してこそ良くなっていくと思います」
満足そうな坂本の様子を見て、中野コーチが語る。
「本人は、だいぶトレーニングしたと言っていますが、まだ甘いところがあります。最後フラついたところは、そこまでは体力が持たなかった、身体の締まり具合が足らないということ。全日本選手権にむけて、もう一絞り出来ると思います」
それを聞いた坂本は、目を見開いて3秒ほど固まり……。そして意を決したように言う。
「絞るって、どんな感じでしょうね、恐ろしい。でも、ひたすらしがみつきます!」
GPファイナル、全日本選手権、そして来季の五輪へ。求められるものがどんなに高くとも、練習の日々を受け止めていく。