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2023年ドラフト“1年後検証”…「東都7人衆」“ドラ1投手大崩れ”の中で奮闘したのは? 目を引く西武の「大成功」《中日・日ハム・ヤクルト・西武編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/08 17:01
2023年ドラフトで評判の高かった「東都7人衆」に苦戦が多い中、西武1位の武内夏暉(國學院大)は10勝を挙げる活躍。新人王候補の筆頭に
西武1位左腕は「圧巻の新人王候補」に…充実のドラフト
【西武 2023年ドラフト指名選手】
1位 武内夏暉 22歳 投手 國學院大 186cm90kg 左投左打
2位 上田大河 22歳 投手 大阪商業大 182cm86kg 右投右打
3位 杉山遙希 18歳 投手 横浜高 181cm82kg 左投左打
4位 成田晴風 17歳 投手 弘前工高 184cm86kg 右投右打
5位 宮澤太成 24歳 投手 IL徳島 185cm95kg 右投右打
6位 村田怜音 21歳 内野手 皇学館大 196cm110kg 右投右打
7位 糸川亮太 25歳 投手 ENEOS 170cm78kg 右投右打
【西武 総評】
ドラフトは1位重複指名になった選手を抽選で獲得できたり、単独指名で有力選手を獲得できた場合……つまりその年の「No.1」を手中にできれば、その時点でもう「100点」だ。そのNo.1が翌年、新人王でも獲得したりしたら、前年のドラフトの成果は「200点」にもアップしよう。
そんな状況に近づいているのが、1位・武内夏暉投手(國學院大)の「今」である。
49勝91敗・勝率.350。ライオンズファンなら目をそむけたくなるような今季のチーム成績。5位・オリックスには14ゲーム差、首位・ソフトバンクには42ゲーム差という「天文学的ゲーム差」で引き離されて、ある人が、「後ろを向いて突っ走っているような……」と表現したが、あまりに当たっていて笑うに笑えなかった。
そんな惨事の中、ルーキー左腕・武内夏暉投手の大奮投は、余計に輝いて見えた。「10勝」は右腕エース・今井達也投手と共にチームの勝ち頭。防御率2.17は今井投手を大きく上回った。
そんな武内投手の快投を支えたのが、無類の制球力だったろう。145イニング投げて、四球わずか22。プロ野球のあの狭いストライクゾーンにいち早くなじみ、見事、ストライク先行の投球で、いつも自分有利で投げていたのだから、ただのルーキーじゃない。このオフ、十二分の心身の手入れ、クリーニングに時間を尽くすよう、願ってやまない。
さらに、2位・上田大河(投手・大阪商業大)も、シーズン途中から中継ぎで一軍のマウンドに上がり、17試合で防御率2.70。来季以降の礎を築いた。アベレージ140キロ台後半の速球と激しいタテの変化を武器に、四球は少なく、三振を奪える投球。「勝利の方程式」の一角を担える資質を見せてくれた。
惜しかったのが、6位・村田怜音(内野手・皇学館大)だ。
196cm110kg……「伊勢のガリバー」と勝手に名づけて、昨秋ドラフトの前から、自分でも盛んに推していた大器。もちろんタイミングが合えばとんでもなく飛ばせるし、ハンドリングの技術もそこそこ持ち合わせて、1年目からの一軍での活躍を予感していたら、案の定、クリーンアップ不在のチーム事情で春に一軍抜擢。ヒットもぼちぼち出ていたところで、痛恨の「左ヒザ後十字靭帯損傷」での戦線離脱には「ああー!」と天を仰いだのは、村田怜音本人だけじゃなかった。
それでも、シーズン終盤にはカムバックして、イースタンの18試合では、打率.357の2弾。ファームでもエラーの目立ったフィールディングは、この秋から来春まで、繰り返し、繰り返し、基本技を根気よく反復して精度を上げてくれば、今のチーム事情だ。華のある超大型三塁手として、ファンを惹きつけられるスター性も開花してくると、大きな期待をかけている。
【総合評価 ◎】
<巨人・楽天・DeNA・ソフトバンク編へつづく>