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「何がバロンドールだ」前代未聞の“事前漏れ騒動”ビニシウス落選に王国ブラジルや名将激怒…マドリーは授賞式ボイコット「敬意を欠いている」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAFP/JIJI PRESS
posted2024/11/03 11:00
2024年のバロンドールは1位ロドリ、2位ビニシウスという結果に。納得していないのは王国ブラジルとレアル・マドリーだ
想像を絶する苦労を重ねた末、かつてジーコがプレーした名門フラメンゴで頭角を現わし、18歳でレアル・マドリーへ移籍。対戦相手のサポーターなどから「死ね!」、「汚い黒人」などと執拗に罵倒され、彼のユニフォームを着せた人形を橋の上から吊るされるなど過酷な人種差別を受けてきたが、それを跳ね返して世界トップクラスのアタッカーへ成長した。
その一方で、対戦相手の選手を挑発したり審判に執拗に抗議するなど、人間性に関しては批判がある。それでも、ブラジルでは彼がスペインで受けてきた人種差別に敢然と抗議する態度が高く評価され、賞賛されている。
受賞を逃したことを知り、ビニシウスは「(世界最優秀選手に選ばれるために)必要なら、僕は今のプレーを10年続けるよ」としながらも、「ただし、彼ら(選考に当たった人々)は(正当な選考をする)準備ができていなかったようだけどね」と胸中を吐露した。
「敬意を欠いている」「何がバロンドールだ」
世界最優秀監督賞を受けたアンチェロッティ監督は、「家族、クラブの会長と選手たちに感謝する。とりわけ、ビニシウスとダニ・カルバハル(やはり世界最優秀選手にノミネートされていた)に」と投稿。2人が選出されなかったことに“抗議”した。
レアル・マドリーは、男子の世界最優秀クラブに選ばれたにもかかわらず、「今回の世界最優秀選手賞の選考結果は、我々への敬意を欠いている」と不満を露わにした。
また、表彰式を中継したブラジルのテレビ局は、「ロドリが素晴らしい選手であるのは認めるが、世界一の選手はビニだ」と息巻いた。スポーツ・ジャーナリストのアナ・タイス・マットスは「選考した人たちに人種的な偏見があったのではないか」と指弾した。
過去6度、女子の世界年間最優秀選手に選ばれているFWマルタ(オーランド・プライド)は、「私はビニの受賞をこれっぽっちも疑っていなかった。何がバロンドールだ」と悪態をついた。
そして、あるブラジル人ファンはYouTubeにロドリの「失敗プレー集」を投稿。「こんなお粗末な選手が世界一なのか」と怒りをぶちまけた。さらに授賞式の後、ロドリが仲間内の祝賀パーティーで、「ビニシウス、チャオ、チャオ」と叫んでビニシウスを挑発したと取られかねない動画が流出し、ブラジルの人々の怒りをさらに増幅させた(注:この動画は、すでに削除されている)。
ビニシウスには17年ぶりブラジル人の期待があったが
そもそも、バロンドール(「金色のボール」を意味するフランス語)とはいかなる賞なのか。
1956年、フランスのフットボール専門誌「フランス・フットボール」が欧州の年間最優秀選手を表彰するために創設。当初は欧州のクラブでプレーする欧州人選手だけを対象としていたが、1995年から欧州人以外の選手も含めるようになり、2007年からは世界各国のクラブでプレーする全選手を対象としている。