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「お前のせいで負けた」男子バレー小野寺太志に届いた誹謗中傷…それでも“笑って消化”した理由「辞めたいなんて…1ミリも思わなかった」 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph bySV.LEAGUE

posted2024/10/31 11:06

「お前のせいで負けた」男子バレー小野寺太志に届いた誹謗中傷…それでも“笑って消化”した理由「辞めたいなんて…1ミリも思わなかった」<Number Web> photograph by SV.LEAGUE

サントリーサンバーズ大阪で主軸を担う小野寺太志(28歳)。パリ五輪で共闘した“先輩”と競い合いながら、SVリーグを盛り上げる

 7月27日、パリ五輪初戦。

 セットカウント1対1で迎えた第3セット中盤、小野寺がドイツ代表の主砲ギョルギ・グロゼルをブロックで仕留めた。

 小野寺は「叫ぼうと思えば叫べることがわかった」と自虐的に笑いながら、そのシーンを振り返った。

「1セット目をドイツに圧倒されて獲られてしまった。その時に、今までと同じ戦い方じゃダメだ、って思ったんです。僕は飄々としているタイプで、チームに対してアクションするわけじゃない。でも声を出すとか、相手よりハッスルするとか、そういうことはできるし、今はしなきゃいけないんじゃないか、まずは気迫だと思ってスイッチを入れました」

「パスがずれる」「トスが合わない」

 パリ五輪の直前、小野寺はポーランド遠征の移動時に腰を負傷していた。ぎっくり腰だった。チーム練習から外れ、加わったのはリハビリも兼ねたトレーニングのみ。不安はあったが、スタッフ陣を信じ、来たる日に向けてやるべきことに集中した。そのおかげもあり、強化試合のポーランド戦では高橋健太郎が負傷したことで、予定より早く実戦復帰を強いられたが、コートに入れば腰に痛みを感じることなく十分動くことができた。

 コンディションへの不安は消えた。だがチームに目線を向ければ、周囲からの「メダル候補」というプレッシャーがのしかかっていた。しかも、初戦が行われるのは異例の朝9時。パリに入ってからはコンディション調整を意識しなければならず、気が休まる暇もなかった。その影響は主力組に顕著で、主力組のAチームとリザーブのBチームで試合形式の練習を行えば、たいていBチームが勝った。腰の状態を鑑みてBチームに入ることが多かった小野寺は、その様子を客観的に見ていた。

「普段なら落ちないボールが簡単に落ちるし、パスがずれる、トスが合わない。些細なことに過敏になっていた。小さいストレスとかイライラが充満しているのは伝わってきました」

 特に深刻だったのが石川祐希の不調だ。

【次ページ】 「俺12点、お前11点。俺より点取ってないじゃん」

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