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「お前のせいで負けた」男子バレー小野寺太志に届いた誹謗中傷…それでも“笑って消化”した理由「辞めたいなんて…1ミリも思わなかった」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySV.LEAGUE
posted2024/10/31 11:06
サントリーサンバーズ大阪で主軸を担う小野寺太志(28歳)。パリ五輪で共闘した“先輩”と競い合いながら、SVリーグを盛り上げる
ドイツ戦にフルセットで敗れたことで、連敗を喫すればメダルどころか予選敗退もある。追い込まれた状況で迎えた2戦目のアルゼンチン戦は、チーム3位の12得点を上げた小野寺の活躍もあって勝利を収めたが、一方の石川は11得点止まり。なかなか調子を上げられずにいた。
小野寺は選手村で同部屋だった石川をあえて茶化した。
「俺12点、お前11点。サイドなのに、俺より点獲ってないじゃん」
その言葉に石川も「ほんとだよ」と笑う。同級生でアンダーカテゴリーから長い時間を共に重ねてきた。主将になってからも石川は「僕は太志がいい」と小野寺との同部屋を希望するほど、信頼を寄せる存在でもある。
「調子が上がってこないのは自分が一番わかっているのに、そこで『何でダメなんだよ』とか言う必要ないじゃないですか。それにそもそも、イタリアであれだけの経験を積んできた祐希に、僕が言うことなんてない。祐希なら上がってくるし、たまたま今調子が悪いだけで、それなら他の選手が決めればいい。だからもっと楽に行こうよ、という気持ちでしたね」
小野寺の見込み通り、準々決勝のイタリア戦で石川は完璧なパフォーマンスを見せた。鮮やかな復調で得点を量産し、2セットを連取。だが第3セット、マッチポイントを握りながらあと1点が獲れず、フルセットの末に日本は敗れた。
小野寺に向けられた“厳しい目”
メダルを逃したものの、イタリア戦は日本時間20時から地上波で生中継され、劇的な展開だったこともあり、五輪全競技の中で最も高視聴率を記録した。「よくやった」「感動した」と好意的な声が寄せられる一方、なぜあの展開で負けるのかと、厳しい声も上がった。
矛先を向けられたのが、小野寺のサーブミスだった。