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「ポトッ…と黒い水が」男子バレー山内晶大(30歳)“代表引退”発言の真意を語る「まずは絶対優勝」204cm長身ブロッカーが探す違和感の正体
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/10/31 11:05
SVリーグ初代王者を目指す大阪ブルテオンで主将を務める山内晶大(30歳)。気持ち新たにシーズンをスタートさせた
11月で31歳。世界を見渡せば、まだまだ継続して活躍できるだろうと確信しているが、パリ五輪後に山内は自らのインスタグラムで「Last Dance」と投稿し、代表引退を示唆した。
なぜパリ五輪を“最後の舞台”と位置づけたのか。
「いつまでもずっとではなく、ここ(パリ五輪)で、という思いがありました。現実的なことを言えば、年齢的にも当然4年後よりは今のほうがいいし、監督も代わってそもそも選ばれるかもわからない。東京の時は、内心(五輪出場の12人に)選ばれるかな、大丈夫かなという不安もあったけど、今回に関しては選ばれる自信があった。じゃあそこで、選ばれた後にどうする? と考えたら、これで最後になるかもしれない、と覚悟を持って『これで終わりだから』と決めて臨むことで心を燃やしたかった。もう次はないんだ、って。その覚悟を持って臨みたい、と思ったから、あえて“最後”と言いました」
静かな口調で、時折笑みを携えながら、山内が夏を振り返った。
山内が感じ取っていた“異変”
近年、好成績を残した男子バレー日本代表は、パリ五輪のメダル候補筆頭に位置づけられていた。国際大会や、国内での公開練習、パリへ渡ってからも連日多くのメディアが訪れ、わざわざ調べなくても自分たちに大きな期待が寄せられていることはわかった。
だが、チームには異変が生じていた。パリ五輪前に時差調整も兼ねて実施されたポーランド合宿の時から、山内はある違和感を抱いていた。
「ここ数年で一番悪いんじゃね? と思うぐらい、状態がよくなかった。みんな気合を入れすぎているというか、力が入りすぎているというか。去年のネーションズリーグで初めてメダルを獲った時とか、OQT(五輪予選)でエジプトに負けてから五輪出場の切符をつかむまでのイケイケ感はなかった。パスやコンビ、僕で言えばブロック。みんながみんな、ちょっとした違い、違和感を持ちながらやっていたので、少なくとも絶好調ではなかったですね」
その不安は選手村に入村してからも完璧に払拭できたわけではなかったが、開幕が近づけば心も昂ぶる。何よりこれが日本代表として臨む最後の大会なのだから「今までやってきたことを信じて、割り切ってやろう」とパリ五輪を迎えた。