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「驚愕の上がり32秒5」武豊の“神騎乗”が生んだドウデュース“究極の末脚”…「偶然を必然にした」天才の手腕とは? 衝撃の天皇賞・秋のウラ側
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/10/29 11:03
武豊に導かれ、上がり3F「32秒5」という驚愕の末脚を繰り出したドウデュース。衝撃的な大外一気で天皇賞・秋を制した
みんなが最後に速い脚を使うのだから、道中は少しでも前につける――というのが普通の戦術だが、武は、みんなが速い脚を使うのだったら、自分はもっと速い脚を使う、という戦術を選んだ。そのために、ペースがどうあれ、騎乗馬のリズムを最優先にして後方で脚を溜め、さらに、追い出すタイミングをギリギリまで遅らせ、最後の最後にエネルギーを爆発させた。
もし負けたら、あれが「敗因」だったとされかねない位置取りを「勝因」にすることができたのは、彼がコメントしているように、腹を括ったからだ。
ハイペースのなかで瞬発力のある馬が勝ったのなら「ハマった」ということになるのだが、これは、スローの瞬発力勝負のなかで究極の切れ味を引き出した武が「ハメた」結果の勝利だった。偶然でしか見られないような超大外一気の競馬を、必然のものとしたのである。
神騎乗で晴らした無念「やっとこの馬の力を…」
武にとって天皇賞・秋の勝利は2017年のキタサンブラック以来7年ぶりで、保田隆芳元騎手に並ぶ最多タイの7勝目。
昨年の天皇賞・秋は、レース当日、他馬に蹴られて乗り替わった。そして今春は、ドバイターフ5着、宝塚記念6着と不本意なレースがつづいた。その悔しさを、他の誰にもできない「神騎乗」で晴らした。
「ドウデュースと勝てたことが本当に嬉しい。今日はやっとこの馬の力を出すことができて、あらためて強い馬だと思いました。いいラストシーズンにしたいと思います」
ドウデュースの次走は、順調ならジャパンカップ。その次は有馬記念。今年限りで現役を引退する。
おそらく史上最速と思われる「究極のピッチ走法」を、最後の2戦で名手がどのように引き出すか。見どころタップリの秋競馬はつづく。