沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
「驚愕の上がり32秒5」武豊の“神騎乗”が生んだドウデュース“究極の末脚”…「偶然を必然にした」天才の手腕とは? 衝撃の天皇賞・秋のウラ側
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/10/29 11:03
武豊に導かれ、上がり3F「32秒5」という驚愕の末脚を繰り出したドウデュース。衝撃的な大外一気で天皇賞・秋を制した
他馬が止まって見えるほどの“圧倒的な速度差”
逃げたホウオウビスケッツが先頭のまま直線に入った。
武は、4コーナーを完全に回り切ってから、ドウデュースをじわっと外に持ち出した。
「手応えはよかったです。ダービーの3、4コーナーを思い出すくらいでした。ペースがあまり上がらなかったので、全体の上がりも速くなるだろうと思っていた。それでも、賭けるしかなかった」
ラスト400m地点でもまだ後方2番手。先頭との差は6、7馬身か。
武が手綱を何度も持ち直しながら促すと、ドウデュースが四肢の回転をさらに速める。同時に首の上げ下げのテンポも早まり、武の肘の屈伸のスピードも高まっていく。大外から1頭、2頭とかわしながら、武は、ラスト200m手前で右ステッキを入れた。つづけて、2発、3発と右の逆鞭を入れると、ドウデュースがまた加速する。
一頭だけスピードが違った。他馬が止まって見えるとは、まさにこのこと。武の手の動きが追いつかなくなるほどストライドのピッチを速め、矢のように伸びる。
ラスト100m地点で、誰の目にも勝敗が明らかになった。大外を飛ぶように伸びるドウデュースが他馬との圧倒的な速度差を見せつけ、凄まじい勢いで突き抜けた。
「上がり32秒5」武豊は究極の末脚をどう引き出したのか
勝ちタイムは1分57秒3。レース全体の上がり3ハロンは33秒7。全体がそれだけ速かったなか、ドウデュースは、メンバー最速かつレース史上最速の32秒5という異次元の末脚を使い、2着のタスティエーラに1馬身1/4差をつけた。
「倍速で走っている感じだった(笑)。強い馬が前を走っていたので、簡単なレースにはならないと思っていたんですけど、ものすごい勢いだったので大丈夫だと思いました」
メンバー中2番目に速い上がりは、4着ジャスティンパレスと10着ニシノレヴナントの33秒0。その次が8着レーベンスティールの33秒2。2着タスティエーラは33秒4、3着に逃げ粘ったホウオウビスケッツは34秒0と、他の馬たちもしっかりと伸びていた。