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『ブラン監督、頭おかしくなったのかな?』男子バレー前監督が最後に明かした…石川祐希が“グー”を出した新技の秘話「世界が真似する発明になるかも」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2024/10/19 11:20

『ブラン監督、頭おかしくなったのかな?』男子バレー前監督が最後に明かした…石川祐希が“グー”を出した新技の秘話「世界が真似する発明になるかも」<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

パリ五輪で退任したフィリップ・ブラン前監督とキャプテンの石川祐希

「グーブロックを採用するかどうかは別として、少なくとも各国のコーチはその意味を検討するでしょうね。世界のバレーボール界は、新しい戦術が出れば、すぐにそれを取り入れ、さらに対抗するアイデアが出てくる世界です。今後、ロサンゼルス・オリンピックまでの4年間で、グーブロックが広く用いられる可能性は大いにあります」

「Bクイックを発明したのは日本、忘れてはいけません」

 パリで日本はメダルに届かなかった。それでも、日本の戦い方は爪痕を残した。

「世界のバレーボール界で、長年にわたる支配的な観念は『高いこと、それは良いこと』というものです。当たり前ですよね。ブロック一発でポイントが取れるんですから。ただし、東京オリンピックからパリ・オリンピックへと向かうプロセスで、日本が示したものは素質があってスキルフルな選手たちがそろえば、十分に戦えるというものです。これは各国の戦術に影響を与える可能性があります」

 先のインタビューで、ブラン監督は「もしもロサンゼルス・オリンピックで日本がメダルを獲得したら、私の仕事もその一部になると思うのです」と話し、日本の健闘を期待していたが、これからの日本にはよりinventive、新しい戦術を開拓する意欲を持って欲しいと話す。

「1960年代にBクイックを発明し、速攻を戦術的に発展させたのは、日本であることを忘れてはなりません。私が2017年に日本代表のコーチとして来日した時、ミドルからの速攻をあまり使っていないことに驚いたほどです。なぜ、速攻を得意とした国なのに使わないのだ? とね。実は、イタリア戦の序盤でミドルからの速攻を多用したのは、かつての日本へのオマージュです。実際、第2セットまではその戦術は奏功しましたから」

 データ分析が進み、戦術的に大きく発展を遂げてきたバレーボール。しかし、ブロックにおいてグーを作るという原始的なアイデアが生まれる余地があった。

 2028年に向け、日本がクリエイティブなバレーボールを展開できるかどうか……。ブラン監督はきっと、日本を見つめ続けることだろう。

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