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「嫌がられるセッターに」女子バレー岩崎こよみ(35歳)が、荒木絵里香にいま明かすパリ五輪の真相「あのゲームであの1点が取れていたら…」
posted2024/10/18 17:00
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Hideki Sugiyama
五輪は別物とよくいわれるが、ネーションズリーグから正セッターとして戦った埼玉上尾メディックスの岩崎こよみ選手が五輪の舞台でぶち当たったものは何だったのか。
大好評シリーズ、動画「Number Volleyball Night」で今月より始まる女子シリーズ第1回として荒木絵里香氏がインタビューした。
35歳。最年長で日本代表に選ばれパリ五輪へ
荒木 岩崎選手とは下北沢成徳高校出身、上尾メディックスや日本代表で一緒だったり、イタリア移籍、そして出産、と共通点が多く伺いたいことは尽きないのですが、まずは代表復帰されたことについて聞かせてください。2021年に出産、競技に復帰し、何歳で代表に?
岩崎 35歳です。2023年に代表の登録メンバーに選ばれ、アジア大会は行ったのでその経験は大きかったのですが、やはりA代表は違いますね。結果を出せば喜んでくださるけど、うまくいかないときはそれなりの反応があり、注目度、周りの反応がまったく違う。同じことをしていても見られているのを感じます。
荒木 影響力が全然違いますよね。しかも、35歳で選ばれ、いきなりの五輪シーズンで、パリ五輪を決めるまでがすごく大事でした。ネーションズリーグで五輪切符を決めるまではどんな心境で戦っていましたか。
岩崎 ネーションズリーグは毎ラウンド、3連戦し1日空いて1試合、またはその逆の日程、5日間に4試合だったのでスケジュール的にも大変でした。日本の試合でも3連戦はそうはないのに、それを世界レベル相手に戦うのは体力的にもハードでした。パリ五輪の切符がかかっているのもすごいプレッシャーでしたし、私の場合は去年から合わせているわけではなかったので、皆が3年かけてここまで築き上げてきたことをこの半年くらいで理解し、コートの中でやらないといけないという難しい状況でした。
荒木 はたから見たら去年からやっていたと感じられるくらい落ち着いて見えたけど……。
岩崎 そうだったらいいのですが。そのような舞台に立てることはなかなかないチャンス、苦しい気持ちとありがたい気持ちが混ざっていて、一日一日、一瞬一瞬を大切に、がむしゃらに過ごしていました。
荒木 最初の代表入りは2009年でしたよね。
岩崎 その時も真鍋(政義)さんが監督で、私はセッターにポジションを変えた年。大型セッターを育てたい、だからちょっと見てみようという感じで呼ばれている、戦力として呼ばれているわけではない。今回は自分のプレーを見て選んでもらえているということがあったので、そこは違いましたね。
五輪でしか感じられない凄み
荒木 ネーションズリーグを戦い抜いて、初めて迎えた五輪。それぞれの試合を振り返りたいのですが、初戦のポーランド戦はどういう気持ちでゲームに入りましたか。
岩崎 最初に選ばれてから15年。時別な思いはありましたが、ネーションズリーグが過酷すぎたのもあり、とにかく五輪を楽しもうと思っていました。観客、会場含めて、このようなところでバレーボールができるのは嬉しいという気持ちが一番大きかったですね。ネーションズリーグではすごく緊張して手が震えたのですが、五輪は比較的落ち着いてできました。1セット目の入りもよかったし、メンタル的にも動きもよかった。しかし相手も必死。目の色も違うし、プレーも違う。
荒木 五輪でしか感じられない凄み、ありますよね。たらればを言っても仕方ないけど、あのゲームであの1点が取れていたらということで思い浮かぶのがこのポーランド戦。4セット目、20点以降、ここを勝ち切れればという際どいところ、どっちに転ぶかというところですごく悔しかった。