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慶大・清原正吾(22歳)の指名はある? ドラフト直前、スカウトが語る“ホンネ”は…「入団したら使わないわけにいかない」「そこが一番悩ましい」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/15 06:00
秋季リーグで2本の本塁打を放つなど活躍を続ける慶大の清原正吾。異例のキャリアでここまで来たサラブレッドを指名する球団はあるのか
これまでの球歴がどうであろうと、「球児の親父には変わりないだろう」とプロ球団の代表として、臆せず「評価」を伝えに行ける者がいなくて、どうする。
この夏から秋のリーグ戦にかけて、慶應義塾大・清原正吾選手は3本の本塁打を放った。
8月31日、東京六大学選抜チームの一員として、日本ハムの2年目左腕・山本晃大投手(関西学院大)の内角速球をレフトポール際に、まず1本。進藤勇也捕手(上武大)が構えたミットに、そのままきまりそうだった左腕特有のクロスファイアーを見事にさばいた。左腕を伸ばして打っていたら、どん詰まりだったはずのきびしいインコースを、左腕をたたみ込むようにして、ライナー性の打球が切れずにレフトポールの右へ楽々届いた。
9月28日、東京六大学・対明治大戦、1点リードされていた9回二死から、今度は、バックスクリーン左へ同点本塁打。起死回生の一打に、高い実戦力をにじませて、翌週の東京大戦では、アンダーハンドの緩いカーブに、やや泳がされながら、神宮球場のレフトスタンドに持っていった。
中学、高校、大学……ずっと野球を続けてきたバットマンでも、バットヘッドで引っかけてファールにしかならないカーブを、逆にヘッドを走らせて真っすぐな打球にしてみせた。
春から秋…わずか7カ月で見せた成長
すっかり、野球選手らしくなった。いや、バットマンとして、すごくレベルアップしてきた。今年4月以降、わずか7カ月ほどの公式戦で、ここまでの「とっさ力」という高い技術を身につけるとは。
大谷翔平のあれこれにも本当に驚かされるが、それならば、清原正吾の近況にも、みんながもっと驚いてよい。
人材がいない、いないと嘆きながら、これほどの逸材を「その程度の理由」で放っておくとしたら、日本球界にとって、こんなに勿体ない話もないだろう。
ドラフトおよそ10日前、いまだプロ球団からの調査書が思うように届いていないらしい……という噂を耳にしながら、そんなことを思っている。