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慶大・清原正吾(22歳)の指名はある? ドラフト直前、スカウトが語る“ホンネ”は…「入団したら使わないわけにいかない」「そこが一番悩ましい」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/15 06:00
秋季リーグで2本の本塁打を放つなど活躍を続ける慶大の清原正吾。異例のキャリアでここまで来たサラブレッドを指名する球団はあるのか
「硬式野球経験わずか3年半で、内野手としてあれだけ動けて、しかも、東京六大学のリーグ戦でホームランまで打ったりするわけですよ。そんな選手、今までいなかった。だから、こちらとしても当ててみる物差しがない。どう評価していいかわからない……っていうのはありますね」
困惑はさらに深まる。
「大学生ですから、こちらとしても、ある程度は即戦力性も欲しい。最近は、大学生でも一軍戦力になるまで2、3年かかるのも多いですけど、清原君の場合、そのへんの順応性が未知数。前例がないですから」
では、素質が認められたとして、どこの球団が指名に及ぶのか?
「指名して入団したら、使わないわけにいかないじゃないですか。そこが、いちばん悩ましいわけですよ」
「誰が清原さんに挨拶に行くんだ」
今さら言うまでもなく、大選手・清原和博氏の息子さんである。
「正直、そこがいちばん難しいんです。そりゃあ、1位や2位でいくんなら、誰が交渉に行っても、胸張って会いに行けるでしょうけど、実力的にそれはない。じゃあ、下位で指名したとして、誰が清原さんに挨拶に行くんだ、お前が行け、いやお前が行け……みたいな」
なんだか、人間くさい話で、人情としてはすごくわかるような気がする話である。
「プロ野球っていう世界は、<格>が大事なんです。格とか顔とか、たとえばマウンドとバッターボックスで向き合った時に、目が合って、もうそれだけで『負けた……』っていう。そういう関係って、現役上がったあともずっとそうなんですよね。残念ながら今、スカウトとか編成をやっている人で、格で清原さんと五分に渡り合える人、いないんじゃないですか」
わかる話だ。いかにもありそうな話ではあるが、しかし、そうしたことで、これだけの才能の未来が閉ざされてしまって、ほんとにそれでいいのか。
今、プロ野球のスカウティングの現場には、プロ野球選手出身者ではない、これまでの因習にとらわれない感覚の持ち主も、ずいぶん増えてきたように思う。
そんな話、筋としておかしいだろうと、立ち上がる者はいないのか。