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京大合格20人以上…偏差値70“奈良No.1公立進学校”野球部が秋大会で大躍進のナゼ「練習は週休2日」「ノックは10分だけ」快挙の秘密は“清掃活動”?
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2024/10/08 17:17
秋季奈良県大会で決勝進出を果たした奈良高校。京大現役合格20人以上の進学実績を誇るNo.1公立進学校の躍進のワケはどこにあったのか
神山の良さは自身も明言するように、大崩れしないところだ。
ストレートは130キロに届かないが、絶妙なコントロールの良さがあり、チェンジアップ、スライダー、カットボールをテンポ良く投げ分ける。「左足を真っすぐに踏み出すことでスムーズに体重移動できるので、そこを意識しています」と、“急造投手”とは思えないリズムの良さの根底を明かしてくれた。
昨年度は京大に現役合格者が21人
奈良高校は偏差値70を誇る県立高校トップの進学校で、昨年度は京大に21人、東大に2人の現役合格者を輩出した。
スーパーサイエンスハイスクールにも指定され、連日の7時間授業を終えて、練習を開始できるのは16時頃。下校時間まで練習時間は2時間ほどだ。進学校の野球部は創意工夫を凝らしながらの練習方法をとるが、吉村監督の考えはいたってシンプルだ。
「練習時間が短いので、ノックは10分くらいです。基本的なことで1日が終わります。バッティング練習も、グラウンドは陸上部やサッカー部、ハンドボール部やアーチェリー部と共用なので、バックネットに向かって打っています。その中でバスターをしたりバントをしたり、それぞれが工夫しながら打っています」
限られた環境下でそれぞれが思考を巡らせながらバットを振る。さらに今年から低反発バットが導入され、公立高校に優位に働く部分も多い。チームではある決めごとをこの秋は遵守してきた。
「ウチは打つべき高さとコースを徹底しています。今までの金属バットだったら詰まっても力ずくでヒットにできましたが、(低反発バットは)きちっと打たないと(捉えないと)いけない。あとはボール球に手を出さないことですかね。高めの真っすぐと低めの変化球は我慢して、甘い球を狙おうと。長打は少ないですが、コースをしっかり狙って打てばポテンヒットになりますので、そこを徹底できるバッターが多いと思います」
何よりチームの強みは「落ち着いて野球ができること」と指揮官は言う。たとえエラーをしてしまっても引きずらず、次のプレーに向け気持ちをリセットできる。
「高校生って、喜んだり落ち込んだり感情を表に出しやすいと思うのですが、みんな次へ、次へ、という意識を持っています。特に(エースの)神山は(感情を)そこまで出さないんですよ」