酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「大谷君の反応を見ながら」ダルビッシュ有、大谷翔平を料理した14球が芸術品…38歳長期離脱も“ボール投げ込み騒動”も平然の投球デザイン名人
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byUSA TODAY Sports/REUTERS/AFLO
posted2024/10/07 19:30
打っても走っても相手にとって脅威の大谷翔平をこれだけ完璧に料理できる。38歳のダルビッシュ有が見せた投球はまさに芸術品だった
2024年3月20日、韓国、ソウルの高尺スカイドームでのMLB開幕戦が初対戦となった。
1回表、2番DHの大谷は2-1からの4球目を打って遊ゴロ、3回の第2打席では2-2からの5球目を打って右前打、これが大谷にとってドジャースでの初安打となった。
さらに4月14日、ドジャースタジアムでの対戦では、2番DHの大谷は1回裏、1-2から空振り三振、3回裏の第2打席はフルカウントから三塁内野フライ、5回の第3打席は0‐2からの5球目を空振り三振に斬った。
レギュラーシーズンの対戦成績は5打数1安打2三振。
同地区ということもあり、以後もどんどん対戦が増えていくと思った。
38歳の長期離脱でも…先発として“まだまだやれる”
特に後半戦「スーパーサイヤ人」みたいになった大谷をダルビッシュがどう料理するのかは、本当に見ものだったはず。しかしダルビッシュは5月19日のブレーブス戦で史上3人目の日米通算200勝を挙げたものの、5月29日のマーリンズ戦で左股関節の張りを訴えて緊急降板しIL(負傷者リスト)入り、さらに7月6日には「家族に関する個人的な事情」で制限リスト入りした。
MLBの制限リストは、NPBの「任意引退」に近い扱いだ。一時的に選手登録から外れるが、復帰するときはその球団に再び登録される。DVなど選手の問題行動で制限リスト入りする選手もいたが、ダルビッシュの場合は純粋に「家庭の事情」だった。
しかし後からわかった話によると、球団側はILに残ってもいいと提案した。しかしダルビッシュは試合に出られないのに選手登録に残ることで、他の選手の出場の機会が奪われることを懸念して制限リスト入りしたのだという。制限リストの期間は無給となるが、彼はそれも承諾した。
8月16日、38歳になったダルビッシュは23日に再びILに載る。そして調整を経て9月4日のタイガース戦で、3カ月余の期間を置いて再びメジャーのマウンドに復帰した。
年齢的なこともあって大きな期待はできないかと思ったが、復帰後はシーズン終了までに5試合に登板。3勝0敗、25.1回を投げて20被安打25奪三振7与四球、防御率は3.55ながら、先発投手として「まだまだ活躍できる」ことを証明したのだ。
大谷に対して“美しい対面”のち完璧な14球
そしてポストシーズン、10月6日の地区シリーズ第2戦に、ダルビッシュは満を持して登板した。
いきなり当たるのは1番DH、「スーパーサイヤ人化」した大谷翔平である。前日のシリーズ第1戦では、高めのボールと思しき球を思い切りかっぱじいて大ホームランにしている。
38歳のダルビッシュは、ひとたまりもないのではないか? と思えたが……。