さらに、関根に自信を与えたのがパリ五輪だった。

「A代表は夢から確固たる目標に切り替わった」と意識が変化し、先のアジア最終予選で1学年上の望月ヘンリー海渡が選ばれた時には、「心の底から悔しかった」と率直な思いを口にしたほど。中国戦とバーレーン戦は「客観と主観の両方を持ちながら深く見ることができた」と振り返り、自分が入った場合にどうすべきかを想像していたと明かした。

「菅原（由勢）選手はサイドバックとしてものすごく能力が高いのに、3バックで臨んだ2試合（中国戦、バーレーン戦）には出場できなかった。僕のような国内でプレーするサイドバックの選手は、ウィングバックかセンターバックとしても食い込まないと厳しい。センターバックはもともと本職なので対応できると思います。ウィングバックでは三笘選手や伊東選手のように突き抜けた突破力は持っていませんが、イメージは堂安選手のやっていたプレー。インサイドハーフの選手たちとかかわり、ポジションを変えながら、サイドで連動をしながらポケットに入っていく。A代表でプレーするイメージは広がったと思います」

遠藤航（右）とコミュニケーションを図る堂安律。タイプこそ違うが、関根はウィングバックでのプレーを想定して背番号10のプレーに着目した　©︎Kiichi Matsumoto

　より近くに日本代表をイメージできるようになった。ただ、海外組がほとんどを占める現在のチームに定着していくことは、至難の業である。

「代表の水準がめちゃくちゃ上がっているのは事実なので、サイドバック、センターバック、ウィングバックができるからOKではなく、どれも高いレベルでこなすことが大事。攻守で何か突き抜けたものを持っていないといけないと感じています。自分はどちらかというと、『満遍なくできる』というタイプ。やはり、尖った部分をもっと作り出していかないといけない」

「尖った部分を」理想は“右の伊藤洋輝”

　モデルケースとなるのが、この夏、50億円を超える移籍金でバイエルンに加入した伊藤洋輝だ。

「（伊藤とは）利き足が違いますが、サイズも含めて似ていると感じています。サイドバックをやっている時は前にガンガン出るというよりも、ちょっと後ろから正確な長短のキックで起点を作る。ポジショニングやキックの落とすところは非常に参考になりますね。伊藤選手はもともと中央の選手なので、ボランチやCBもできますし、スピードもあって、ウィングバックでもあの対角のキックは“突き抜けたもの”になると思います。そういう意味では理想としている選手です」

　伊藤は現在、負傷離脱中。関根にチャンスが回ってきた要因の一つでもある。ライバルにリスペクトを送りつつ、関根自身も日本代表入りだけで一喜一憂している暇はない。パリ五輪で突きつけられた厳しさを、糧にする時がきた。

世界的ビッグクラブであるバイエルンの一員となった伊藤洋輝（25歳）。ポジションだけでなく、身長188センチという体格も関根と近しい　©︎Kiichi Matsumoto

「（パリ五輪の）マリ戦やスペイン戦が自分にとって一番成長できた瞬間でした。１つのボールタッチの置き所を間違えたら、すぐにかっさらわれる。守備で迷ったら一気にぶっちぎられる。本当に極限状態でボールを遊ばしている暇もないし、雑念を感じる暇もない。これがきつかったけど、めちゃくちゃ楽しかった。もしA代表に入れたらそういうものを味わえるかもしれないし、味わいたい。そのためには自分自身で掴み取る以外方法はない。今はその時が来ることを信じてやり続けるのみだと思います」

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