野球好きの少年が、そのまま大きくなり、メジャーリーグの舞台でプレーしている。それが大谷だというのだ。

　大谷に対する好印象は、デーブ・ロバーツ監督の言葉からも感じられる。

「彼は社交的というよりも、自分の時間を大切にしているとは思うけれど、なによりチームのひとりになろうと努力していると思う」

　努力。大谷には、それが求められた。

「水原一平事件」で“壁”が消えた

　ハリス記者は、大谷のドジャースでの人生は最悪の形でスタートしたと書く。3月の「水原一平違法賭博事件」である。

　記事を読むと、この違法賭博事件の問題以前に、水原通訳の存在自体がチームに微妙な影響を与えていたことが読み取れる。

　ロバーツ監督によれば、スプリングトレーニングが始まった時点で、水原通訳が大谷の“buffer”だったと語っている。緩衝材と訳すべきかもしれないが、文脈を読むと「仕切り」「壁」の方が近いだろう。チームメイトたちは、水原通訳が大谷に代わってアプリのメッセージを送信していることも知っていたという。

ロバーツ監督と通訳なしに談笑する大谷（5月17日、レッズ戦）　©Getty Images

　ロバーツ監督は、「翔平とダイレクトにコミュニケーションを取るのは、難しい状況だった」と振り返り、ハリス記者によれば、大谷自身もクラブハウスではチームメイトとは適切な距離を置き、練習の時だけ交わるというスタイルだった。

　しかし、開幕戦を韓国で迎え、違法賭博事件が露見すると状況は一変する。水原通訳が消えたことで、大谷と他のチームメイトとの間の“障壁”がなくなったのだ。キケ・ヘルナンデスはこう振り返っている。

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