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「オオタニよりリンドーア推し」NYメディアを黙らせた大谷翔平“MVP最重要成績”はDH一刀流でもダントツ…得るだろう「奇想天外な称号」とは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2024/10/05 17:20
「54-59」、あと一歩で三冠王。打者専念かつドジャース1年目のシーズンに大谷翔平が見せた野手としての力は飛び抜けたものだった
確かにMLBでは指名打者は、守備に就く選手よりも評価が低い傾向にある。WARの考え方では、DHの守備WARはゼロではなくマイナス評価になるからだ。
マリナーズでイチローのチームメイトだったエドガー・マルティネスは「史上最高の指名打者」と評され、シーズン最高の指名打者に与えられる「エドガー・マルティネス賞」に名前を残しているが、野球殿堂投票ではなかなか票が集まらず、引退から15年後の2019年にようやく殿堂入りした。なお「エドガー・マルティネス賞」と打撃のベストナインである「指名打者のシルバースラッガー賞」は別の賞であり、受賞者は微妙に違っている。
「DHで初受賞」に少し違和感があるワケ
実は今回、大谷がMVPを受賞すれば「DHで初受賞」という報道に対しては、筆者は少し違和感がある。
【過去5年のア・ナ両リーグMVPの守備位置別出場試合数】
〈2023年〉
ア:大谷翔平(エンゼルス)WAR9.9/DH134/投手23
ナ:アクーニャJr.(ブレーブス)WAR8.2/DH2/外野156
〈2022年〉
ア:ジャッジ(ヤンキース)WAR10.5/DH25/外野151
ナ:ゴールドシュミット(カージナルス)WAR7.7/DH23/一塁128
〈2021年〉
ア:大谷翔平(エンゼルス)WAR8.9/DH126/投手23/外野7
ナ:ハーパー(フィリーズ)WAR5.9/DH2/外野139/一塁1
〈2020年〉
ア:アブレイユ(ホワイトソックス)WAR3/DH6/一塁54
ナ:フリーマン(ブレーブス)WAR3.3/DH2/一塁58
〈2019年〉
ア:トラウト(エンゼルス)WAR7.9/DH12/外野122
ナ:ベリンジャー(ドジャース)WAR8.6/一塁36/外野130
これまでDH専業でMVPになった選手はいないと報じられてきた。
指名打者のMVP投票では1980年のレジー・ジャクソン(ヤンキース)、93年のポール・モリター(ブルージェイズ)、2000年のフランク・トーマス(ホワイトソックス)、2005年のデービッド・オルティーズ(レッドソックス)、2014年のビクター・マルティネス(タイガース)の「2位」が最高だった。
1979年のア・リーグMVPエンゼルスのドン・ベイラーは、外野手で97試合、指名打者で65試合に出場してMVPを獲得したが、これが「指名打者含有率が最も高いMVP」だといわれてきた。
大谷が得るであろう「奇想天外な称号」とは
しかし過去5年のMVPの守備位置を見てみると、大谷は2021年のMVP時はDHで126試合、2023年はDHで134試合に出場している。DH含有率は極めて高かった。
ただMLBの公式サイトでは大谷のポジションは「DH」ではなく「TWP(Two Way Player)」、つまり「二刀流」である。
とはいえ今年は投げていないから、純然たる「DH」だ。