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パリ五輪“ボクシング性別騒動”とは何だったのか?「誹謗中傷が殺到」「報道陣から怒号も」発端は“不透明な性別検査”…現地記者が伝えるウラ側 

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齋藤裕

齋藤裕Yu Saito

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posted2024/09/15 11:02

パリ五輪“ボクシング性別騒動”とは何だったのか?「誹謗中傷が殺到」「報道陣から怒号も」発端は“不透明な性別検査”…現地記者が伝えるウラ側<Number Web> photograph by Getty Images

8月3日、「性別騒動」の当事者として批判を浴びながら準々決勝を戦い終えたイマネ・ケリフ。その瞳には涙がにじんでいた

“問題の発端”IBAによる検査の「不透明な実態」

 IBAは8月5日、記者会見を行い、ケリフと台湾の林郁婷(リン・ユーティン)が五輪のボクシングに出場していることについて「2人は検査の結果、『男性』であることが判明している。IOCはボクシングの破壊者だ」と批判。「私たちのスポーツは一歩間違えれば選手が亡くなってしまう」と競技特性から判断の正当性を訴えた。

 また、「バッハ会長は、あらゆる汚職の源にいる」と個人攻撃も展開。一方、検査についての詳細は明かされなかった。じつはIBAによる検査は、日本ボクシング連盟の仲間達也会長も「各国の競技団体も、どういうものか分かっていない」と語る不透明なものなのだ。

 そもそも、ケリフは「トランスジェンダー」ではない。IBA独自の調査で適格でないとされているが、IOCが根拠とするパスポートでは「女性」と明記されている女子ボクサーだ。IBAが主張の根拠とする「検査」とIOCが根拠とする「パスポート」で対立軸が生まれ、ケリフはIBAからの不適格宣告だけでなく、SNSで誹謗中傷を大会期間中に受け続けた。その苦境はアルジェリア国民をさらに燃え上がらせた。

 アラブ諸国のひとつに括られ、国民のほとんどがイスラム教を信仰しているアルジェリア。ジェンダー規範も強いように思えるが、この問題を巡っては「国民の娘」であるケリフの味方となった。

<後編へ続く>

#2に続く
パリ五輪“性別騒動ボクサー”が語った不条理「なぜ彼らが私を嫌うのか、本当にわからない」…対戦相手「彼女は女性」現地で記者が見たリアル

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