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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「ドヘニーの増量は間違っていなかったけど…」元世界王者・岩佐亮佑が読み解く井上尚弥の将来図「アフマダリエフが“塩試合”に持ち込めれば」
posted2024/09/10 17:02
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Takuya Sugiyama
9月3日の世界スーパーバンタム級4団体統一戦では、試合当日の体重上限が設けられていなかったこともあり、開始のゴング前からウエイトが注目された。井上尚弥は前日計量のスーパーバンタム級リミット体重55.3kgから7.4kg増の62.7kg、TJ・ドヘニーは55.1kgから11kg増の66.1kg。大幅増量のデメリットを指摘する声も聞こえてきたが、元世界スーパーバンタム級王者の岩佐亮佑は力を込めていう。
ドヘニーの増量は間違っていない
「37歳であの動きができるんだから、何も間違っていなかったと思います。井上選手が強すぎて大きな差は出ましたが、直近の試合を見てもドヘニーの動きはそれほど変わっていません。ここまでも同じようなやり方で勝ち続け、井上選手に挑戦する権利をつかんだんです。そこはリスペクトしたい。どんな体重、体だろうが、本人にとってはあれが正解。日本人と外国人では筋肉の質も違いますから」
目を引いたのは、ドヘニーの大きな体だけではない。井上の鍛え抜かれた上半身も特筆すべきもの。本人が「試した」という7kg増の体もまたスーパーバンタム級では大きく見えたという。質の良い筋肉をつくり、しっかり絞り込んでいるのは、すぐに見て取れた。もちろん、見た目だけの話ではない。
「7kg増やした井上選手もスピード、切れともにこれまでと変わっていなかった。いつもどおり、正確でした。距離の取り方、パンチをよけるミリ単位の感覚、一瞬の反応を見れば、分かると思います。ドヘニーのパンチもきっと計算どおり、紙一重でかわしている。感覚に少しでもズレが生じれば、あのような動きはできないはずです。もともと7kg戻す体をつくっていたんだと思います。もしも5kg戻す体に7kg戻していれば、その感覚もズレたかもしれないですが」
前日計量後の“リカバリー”は、緻密な計算のもとに行われている。王者の井上だけではなく、挑戦者のドヘニーに対しても、当てはまること。減量とリカバリーを繰り返してきた元世界チャンピオンは、誤解のないようにあらためて説明してくれた。