- #1
- #2
オリンピックPRESSBACK NUMBER
パリ五輪“性別騒動ボクサー”が語った不条理「なぜ彼らが私を嫌うのか、本当にわからない」…対戦相手「彼女は女性」現地で記者が見たリアル
posted2024/09/15 11:03
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph by
Getty Images
「私が知っているのは…」ケリフに敗れた選手の言葉
8月6日のボクシング女子66kg級準決勝、アルジェリアのイマネ・ケリフとタイのチャンチェーム・スワンナーペンの対戦。テニスの全仏オープンが開かれる聖地「ローラン・ギャロス」は中央にリングが設置され、熱気に包まれていた。
観客席から発せられるケリフを根元から支えるような低く力強いアルジェリアの声が約5000人収容のスタンドに轟く。国旗は50個ほどが点在。他の会場と比べてもここまでの重低音が響くのは初めてで、試合が行われていなくても掲げられ続ける国旗の多さはまさに開催国フランスに匹敵するほどだった。
ここまでアルジェリアの応援がフランスの地で熱狂的になるのは理由がある。アルジェリアは1830年に行われたフランス出兵から植民地となり、1962年の独立まで支配関係は続いた。今年3月に公表された国際移住機関(IOM)とアフリカ連合委員会(AUC)の「アフリカ移住報告書(第2版)」によれば、2020年のアフリカ各国からアフリカ域外の移民数でトップはアルジェリアからフランスの約164万人(2位はモロッコからフランスの約106万人)。過去も今も両国は深いつながりがあるのだ。
準決勝もフルマークで制したケリフはリングの中央で、駆け出すように両足を上下しながらキャンバスを鳴らし喜びを表現。涙はなかった。試合後、対戦相手のスワンナーペンは一般メディアの英語での取材に応じることはなかったが、ロイター通信の取材に「私は今起きている論争を詳しく分かっているわけではないが、私が知っているのは、彼女が女性であり、強いファイターであるということだけだ」と答え、ハンガリーのような声明を発表することはなかった。