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「井上尚弥はKOを焦るべきではない」米ボクシング誌編集長が期待するドヘニー戦の理想シナリオ「ドヘニーは過小評価されている」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2024/09/02 11:04

「井上尚弥はKOを焦るべきではない」米ボクシング誌編集長が期待するドヘニー戦の理想シナリオ「ドヘニーは過小評価されている」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

順調な仕上がりを見せる井上尚弥(31歳)。今回、迎え撃つのは3連続KO勝利中のベテラン、TJ・ドヘニーだ

 ここで展開予想を巡らせるとすれば、これまで指摘した通り、井上はドヘニーへの敬意を感じさせる戦い方をするんじゃないかと思っています。ジャブで距離をコントロールし、右ストレートを有効に使うでしょう。ボディには力を込めたパンチを打ち込み、左フックでカウンターを取ろうとするのではないでしょうか。そうやって優位に戦いを進めた上で、井上がドヘニーを初めてストップする選手になると見ます。

 現在、井上はリングマガジンのパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングで2位につけています。1位のオレクサンデル・ウシク(ウクライナ)、3位のテレンス・クロフォード(アメリカ)に挟まれ、“現代のトップ3”の一人というのがほとんど世界共通の評価になっています。

 リングマガジンのPFPランキングでは、ドヘニーに勝っても試合後に1位に浮上する可能性は低いでしょう。現在のドヘニーは一般的に識者たちから莫大なリスペクトを得ているとはいえず、軽視している中にはリングマガジンのランキング選定委員のメンバーも含まれるように思えるからです。とはいえ、打たれ強さには定評があるドヘニーを1、2ラウンドで沈めるようなことがあれば、井上の1位再浮上を推すパネリストも出てくるかもしれませんが。

アフマダリエフ、グッドマン、中谷潤人…

 最後に井上の今後に目を向けておくと、ドヘニー戦をクリアしたとすれば、WBAの指名挑戦者であるムロジョン・”MJ”・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との対戦が見たいですね。スーパーバンタム級の中でなら、井上にとって最も警戒すべき相手は元WBAスーパー、IBF統一王者でもあったMJではないかと思います。

 とはいえ、もう一人の指名挑戦者であるサム・グッドマン(オーストラリア)との対戦を選んだとしても特に異存はありません。近い将来というのであれば、私もまた3階級制覇王者・中谷潤人(M.T)とのスーパーファイトを楽しみにしています。

 井上との試合を実現させる前に、中谷はバンタム級で統一戦を行い、少なくとも2つのベルトを獲得してステイタスを上げねばならないのでしょう。そんなシナリオ通りに運んだ上での激突となれば、井上対中谷戦は日本ボクシングを語る上で歴史的な一戦になるはずです。その試合が組まれれば……大一番をライブで目撃するために、私も日本に足を運ぶ準備をすることになると思っています。

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