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「ネリのように井上尚弥を見下す発言はしない」37歳ドヘニーはなぜ“最強王者”に挑戦状を?「最高のタイミングで最大のファイトが訪れた」
posted2024/08/30 11:05
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Daisuke Sugiura
全階級でも最高級の実力者と認められるようになった井上尚弥(大橋)。その最新の刺客はアイリッシュのベテラン、TJ・ドヘニーだ。井上の持つ4冠にドヘニーが挑戦するタイトル戦は9月3日、有明アリーナで行われる。
元IBF世界スーパーバンタム級王者のドヘニー(アイルランド)は戦績26勝(20KO)4敗という強打を持ち、愛称は“ザ・パワー”。2019年4月〜2023年3月の6試合中4敗を喫するなど近況は最高級とは言えない。それでも昨年6月には中嶋一輝(大橋)、同10月にはジャフェスリー・ラミド(米国)をKOするなどここに来て絶好調で、37歳になったドヘニー本人も2019年以来となる世界王座返り咲きに自信を深めているようである。
決戦直前の8月26日、滞在中の横浜市内のホテルにドヘニーを訪ねた。今をときめく“モンスター”を相手に絶対不利の下馬評ながら、落ち着いた態度は大ベテランの貫禄十分。井上への深いリスペクトを語りつつ、30代後半にして「今がピーク」と語るドヘニーは自身の勝利を心底から信じているようだった。
(以下、ドヘニーの一人語り)
◇ ◇ ◇
37歳でキャリア最大のファイト
今回、私のキャリアの中でも最高のタイミングで最大のファイトが訪れたと思っている。37歳という年齢がとやかく言われるが、加齢が問題になるのは実際に衰えを見せ始めたときだけ。私がそうではないことは、2023年6月以降は3連続KO勝利という最近の戦いの中で証明されているのだろう。
2018年に一度は世界王者になったが、当時の私はプロのトップクラスで戦う選手としての経験が十分ではなかった。アマチュアでは豊富な実績があったとしても、プロの王者レベルとしてはまだ未熟だったんだ。
おかげで2019年4月、ダニエル・ローマンとの初めての統一戦では0-2の判定で敗れてしまった。その後も敗戦は経験したが、それらのすべての物事が今に至るまでの助けになり、学び、適応を続けている。自分は遅咲きであり、経験を重ねて向上しているという自負もある。