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「井上尚弥はKOを焦るべきではない」米ボクシング誌編集長が期待するドヘニー戦の理想シナリオ「ドヘニーは過小評価されている」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/09/02 11:04
順調な仕上がりを見せる井上尚弥(31歳)。今回、迎え撃つのは3連続KO勝利中のベテラン、TJ・ドヘニーだ
井上はドヘニーを相手にノックアウトを焦るべきではないと思います。37歳のアイルランド人は見た目通りにタフな選手であり、強烈なパンチにも耐えられます。アンダードッグの立場には慣れており、不利な予想も気にはならないでしょう。多くのメディアはドヘニーを過小評価しており、二線級の選手だと考えている人も少なくはないですが、彼がリングマガジンのスーパーバンタム級ランキングで7位にランクされているのには正当な根拠があるのです。
2019年、当時はIBF同級王者だったドヘニーが、カリフォルニア州イングルウッドのザ・フォーラムでWBA王者ダニエル・ローマン(アメリカ)と対戦した統一戦を私はリングサイドで取材しました(注・ドヘニーはローマンに0-2判定負け)。その頃からドヘニーのタフネスと闘志は抜きんでたものがありました。現在は3試合連続KO勝利中でもあり、中でも昨年10月、ジャフェスリー・ラミド(アメリカ)を初回KOした勝利には目を見張らされました。
この危険な強打者を相手に序盤KOを狙えば、危ないパンチを合わされる可能性が出てきます。そんなリスクを避けるべく、井上はまずはジャブを重視してアウトボクシングし、機を見てボディを狙うのがいいでしょう。ボディを弱らせてから、後半ラウンドのKOを目論むのが得策というのが私の見方です。
「ドヘニーに勝機があるとすれば…」
一方、ドヘニーの方は早い段階から井上を打ち合いに巻き込むことが必要になってくるでしょうね。乱戦の中で、サウスポースタンスからの左オーバーハンドを決めれば面白くなるかもしれません。そう、ドヘニーに勝機があるとすれば、ラミドを沈めたのと同じパンチを井上に当てた時というのが私の見立てです。