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「私のオリンピックは終わってしまいました」田中希実が味わったパリ五輪“絶望”からの収穫「幸せを噛み締めたい…完遂できたんじゃないかな」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2024/08/12 19:30
パリ五輪1500mと5000mに出場した田中希実。両種目とも決勝進出はならずも、2度目の五輪で味わった絶望と収穫とは…
パリ五輪5000m予選後、どん底まで落ち込み、たくさんの涙を流し、そして気がついた。
大事なことは自分の走りを貫くことだと。
5000mではそれができなかった。しかし少し恐怖心があった1500mで自分が思う走りをすることができた。
パリ五輪前に田中は「1500mは3分55秒くらいの記録が必要になると思う」と話していた。今大会では出すことはできなかったが、スタートするまでレース展開が分からず、ペースの上げ下げが激しい中で3分台を出せたのは大きな収穫になった。
怪我なく練習していればきっといつかタイムや結果はついてくる。
ダイヤモンドリーグなどペースメーカーがつき、予めペースが決まっているレースであれば自己ベストを更新できると手応えを感じることもできた。
「殻を破りたい」
3年前の東京五輪以来、ずっとそう思ってきた。
それはタイムやレース戦略よりも「心」や「考え方」の部分だったのかもしれない。
パリ五輪は「本当の幸せを噛み締める大会」
「楽しかった東京五輪と比べると今大会は苦しい時間も長かったです。(東京五輪後の)世界選手権オレゴン大会とブダペスト大会もすごく苦しくて、どうしてこんな思いをしなければいけないのかっていう理不尽に感じる部分もありました。今回は苦しいはずなのになんか嬉しかったり、幸せだって思ったりすることもあって、一緒に苦しんでくれる仲間の存在っていうのを改めて感じました。今大会の目標は1500mと5000mの両方で決勝と思っていましたが、その後ろにあるテーマとして『幸せを噛み締めたい』という思いがありました。たくさんの人に支えられて味わえる苦しみだと思うことができたので、本当に幸せを噛み締める大会になったので、テーマという部分ではちゃんと完遂できたんじゃないかなと思います」
パリ五輪は田中にとって次に進むための大事な、そして大きな大会になった。