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「私、希実のこと大好きなの」女王ハッサンが田中希実を大絶賛! 世界陸上5000mで日本記録更新に田中は「タイムとしては100点満点!」
posted2023/08/26 20:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
JIJI PRESS
「さぁ、いくよ。希実、しっかりついてきな」
シファン・ハッサンの背中がそう言っているように見えた。
8月23日に行われた世界陸上5000m予選でシファン・ハッサンは号砲と共に先頭に立った。
ハッサンはいつも最後尾につけて最後の2周くらいから動くパターンが多い。スタートから先頭に立って引っ張るのはとても稀だ。この種目の世界記録を持つキピエゴン対策なのか、それともほかに意図があるのか。いずれにしても彼女が確固たる決意でレースを引っ張っていることが窺えた。
田中希実はハッサンにすぐに反応し、後ろにつく。
迷いはなかった。
ハイペースのレース展開に
最初の400mを73秒で入ると、ハッサンは少しずつペースを上げ、1000mを2分57秒で通過する。
田中のポニーテールが左右に揺れるが、無理をしているようには見えない。
2000mは5分50秒で通過し、この間の1000mのラップは2分53秒に上がる。縦長の集団から一人、また一人離れ集団は11人になる。
大きなストライドのハッサンに合わせ、田中も力強く歩を進めているが、伸びやかな走りからレースを楽しんでいることが伝わってくる。
「行けるところまでついていこう」
田中の目に迷いはなく、勝負師のそれになっている。
2500mでハッサンがわずかにペースを上げると集団は田中を含めて7人に。
3000mの通過は8分46秒とかなりハイペースだ。
意地でも順位を落とさないように
残り1000mでハッサンがペースを上げると、さすがにきつくなったのか田中が視線を下に向ける回数が増えた。