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「私のオリンピックは終わってしまいました」田中希実が味わったパリ五輪“絶望”からの収穫「幸せを噛み締めたい…完遂できたんじゃないかな」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2024/08/12 19:30
パリ五輪1500mと5000mに出場した田中希実。両種目とも決勝進出はならずも、2度目の五輪で味わった絶望と収穫とは…
1週間前の8月2日に行われた5000m予選で田中は9着で決勝進出を逃している。
速いレース展開になったらいいな、という田中の希望とは一転、5000m予選はスローペースで始まった。
「自己ベストを出したい」と日本の山本有真が大きく飛び出し、他の選手はその後ろで互いに牽制し合いながらスローペースで進んだ。
田中は1000m前から第2集団の先頭を引いたが、1000m3分10秒、2000m6分15秒、3000m9分22秒とペースはさほど上がらない。
田中がレースを動かしたのは3400m付近で先頭の山本をかわしてからだ。
1周68秒とペースを上げると集団は18人から11人に絞り込まれた。
決勝に進めるのは8着まで。
4000mを12分14秒(この1000mは2分52秒)とペースを上げるが集団の人数は変わらず、田中のストライドも徐々に広がってくる。
勝負は残り300mから始まった。
バックストレートで田中は集団に飲み込まれたが、負けじと必死に食らいつく。7番目で最後の100mに入ったが、最後に2人にかわされ、15分00秒62の9着でフィニッシュした。
今大会は各組8着までが決勝に進出し、着順以外の選手がタイムで拾われることはないため、田中の決勝進出は無くなった。
「私のオリンピックは終わってしまいました」
報道陣の前に姿を現すと、そう言って涙をこぼした。
「のびのび走れていたら加速できて、ラストも止まらなくてって思ったんですけど、焦りがあったりして。やっぱり世界はそうはさせてくれないという現実を知った。力にひけを取らない自信はあるけれど、その力の出し方が他の選手より負けていたところかなと思います」
3年間コツコツ積み上げてきたことを出せなかった悔しさ、もどかしさを口にした。そして狙っていたレースが思わぬ形で終わってしまったことを現実として受け止められなかった。
「5000mの方が1500mよりも自信がある状態だったし、5000mと1500m両種目で頑張りたいと思っていたので、1500mに向けて気持ちを切り替えるとかそういうことは考えられません」
「結果を出さないと自分には価値がない」からの変化
時折、涙をこぼしながら対応し、最後にお辞儀をして立ち去った。
絶望的な表情をしていた。